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ちぐはぐな嘘を塗り重ねていた高橋被告

「(すでに)Aさんが死んでいるのではないかと考えた。自分はネクタイで首を絞めて自殺しようと考えた際、Aさんと同じような死に方をしたかったので、被害者の首を絞めた」

 この不自然な証言は、判決では留保はつきつつも認められていない。前出の大手紙記者が解説する。

写真はイメージ ©iStock

「高橋被告が本当に死のうとしていたかは分かりません。一方で、事件当日にAさんから髪の毛を掴まれ蹴られる、といった暴行を受けたと正当防衛も主張しました。Aさんが亡くなっているので事実は解明不可能ですが、高橋被告は他にも嘘を多くついていたんです。

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 Aさんの殺害後に家族に謝罪と自殺のメッセージを送っているのですが、『Aさんから一緒に死んだら楽になると持ちかけられた』などと書かれていたそうです。一方で、メッセージを見た家族の119番通報を受けて電話をしてきた救急隊員には『Aさんに刺されそうになったから刺した』と話した。そうかと思うと、現場に到着した救急隊員には『Aさんが〈一緒に死のう〉と言って刃物を取り出し自殺を勧めたので刺した』と虚偽の説明をしています。

 判決でも『これらの被告の嘘は、被害者に責任をなすりつけて自己保身を図ろうとするものであり、犯行と同様に自分のことだけを考えたものである』と判断されています」

「正当防衛」や「Aさんに誘われた心中未遂」などといったちぐはぐな嘘を塗り重ねていた高橋被告。その本心は知る由もないが、束縛の強さは異常だったといえるだろう。判決文によると、高橋被告はゴルフの練習場などにもAさんがいるかどうかの確認の電話をしていたという。これもまた、犯罪の前兆だったと言えるかもしれない。