事件から1年3カ月が経過した9月16日の初公判は、衝撃の幕開けだった。
証言台に立った宮本被告は、大寄淳裁判長の問いかけに冒頭から無言を貫いた。
裁判長 名前を言ってください。
被告 ……。
裁判長 名前を言ってください。
被告 ……。
裁判長 生年月日はいつですか。
被告 ……。
裁判長 名前を言うつもりはないということですか。
被告 ……。
裁判長 本籍、住所、職業についてもお話しになるつもりはないということですか。
被告 現住所は大阪拘置所です。
裁判長 お名前や生年月日は述べてもらえませんか。
被告 何か意味がありますか。儀礼的なことであれば抜かしてください。
「判決は死刑をお願いします」「どなたからの質問に対しても受ける気はありません」
ここで被告人側の弁護士が「ひとつ、確認してよろしいでしょうか」と裁判長に断りを入れ、証言台の被告のもとへ歩み寄って何やら耳元で囁く。そして、再び裁判長からの問いかけが続いた。
裁判長 名前を言ってください。
被告 記載されているとおりです。
裁判長 生年月日もそうですか。
被告 おそらくそうです。
裁判長 本籍も起訴状に書かれている内容と変わりありませんか。
被告 はい。
裁判長 職業は現時点では無職ですか。
被告 はい。
その後、検察官から公判前整理手続きの内容が読み上げられ、裁判長は証言台に立っていた宮本被告に対し「被告人には黙秘権があります」と告げた。すると宮本被告は突然、堰を切ったように口を開いた。
被告 えーっと、裁判員の方にお願いします。判決は死刑をお願いします。裁判官に事前にお願いしたかったのですが、お伝えすることができないということで今、お伝えしました。検察には事前に論告求刑で死刑をお願いして欲しいことは伝えております。
そして、こう続けた。
被告 被害者家族の意図を汲むように、ぜひとも死刑を求刑していただきたいと思います。私については、いかなるどなたからの質問に対しても受ける気はありません。弁護人には、反対尋問もいっさいしないようにお伝えしております。
罪状に関しては黙秘を貫く一方で、宮本被告は自ら極刑を裁判員に求めたのだ。遺族側の弁護士も「こんな話は聞いたことがありません」と口にした。また、死刑を求める被告に対し、被告側弁護人は「犯人性を争う」と発言した。これはつまり、無罪を主張するということだ。