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 住人を恐怖に陥れている巨大蛾の正体は「クスサン」というヤママユガ科の蛾だ。成虫は羽を開くと7センチから13センチほどと大人の手のひらほどの大きさになる。日本蛾類学会の岸田泰則会長は「クスサン」の生態について次のように解説する。

「『クスサン』は世界でもかなり大きい部類に入る蛾です。沖縄から北海道までほぼ日本じゅうに生息し、北海道では毎年8月下旬から羽化をはじめます。羽に目玉のような擬態があるのは、天敵の鳥に対する防御だと考えられています。紫外線を好む性質があるので、紫外線を出さないLEDよりも、水銀灯などに多く集まります。夜行性で、夜22時過ぎから本格的に活動を開始します。個体の寿命は1週間から10日ほどですが、その間に1匹あたり数100個の卵を生みます」

©️文藝春秋

殺虫剤にもほとんど効果がない

 毒はないため直接の危険は少ないというが、恐怖感を煽るサイズやグロテスクな模様、そして何よりあまりの大量発生ぶりに各市役所には市民から恐怖の声が相次いだ。

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「市民の方から、『気持ち悪い』『朝、道路にクスサンの羽や死骸が大量にあって洗い流すのが大変』といった苦情が多く寄せられています。対応は難しいのが現状です」(三笠市役所市民生活課の担当者)

SAエリアのトイレの壁に群がる無数のクスサン(目撃者提供) 

 また、滝川市の市民生活部暮らし支援課の担当者は「クスサンには殺虫剤も効果がない」と頭を抱えていた。

「あまりの多さに、夜は街灯を消す地域すら出る始末でした。『殺虫剤でなんとかならないか』と市民の方から相談を受けたりするのですが、クスサンは成虫になった後は死ぬまでものを食べず、エサ式の殺虫剤は効かないと聞いています。8月に比べて今はピークアウトしていますが、大量発生の理由はまだわかっていません」