大量に発生したクスサンによって思わぬ二次被害も出ていた。
「8月のお盆辺りがピークで、富良野市の収集に500匹以上の死骸を出された方もいらっしゃいました。クスサンが死んだ後も、大量の死骸を狙ってカラスの群れが集まり、クスサンの胴体のみを食べるんです。残骸やカラスの糞で道路が汚れる場所が随所にありました」(富良野市役所市民生活部環境課の担当者)
クスサンを捕食するのはカラスだけでなく、北海道ならでは動物も現れた。その被害に遭ったというのが冒頭の男性だ。
「ハウスで花を栽培しているのですが、ハウス内の空気を入れ替えるために窓を開けた途端、照明の周りにうじゃうじゃいました。昼間のクスサンはまったく動かないので、それを摘んで大型バケツに入れて捨てる作業を繰り返しまた。作業中にこっちに向かってバサバサと音を立てて飛んでくる姿は“モスラ”そのもの。しかもクスサンを狙ったキツネにハウスが破られたりする被害も出ています」
「大量発生が数年続く可能性も」
記者の車も運転中の蛾の死骸がフロントガラスに積もり、クスサンが連続して車に衝突する恐ろしい光景は今でも忘れられない。だが、前出の岸田氏は「(クスサンの)大量発生は続くことがある」と指摘する。
「成虫のクスサンは食事をすることはなく、交尾して卵を産むだけです。毒もない蛾で、もともと大量発生することが多く、都内でも過去に何度も大量発生が起きています。環境変化や、天敵となる動物の増減などいくつかの要因が影響していて、今回の大量発生は数年続く可能性があります。殺虫剤も人間にも有害だったり、他の生態系を壊してしまう可能性もあり大量の使用は難しい。有効な手立ては今のところみつかっていないですね」
生まれただけで嫌われる蛾も気の毒だが、日常に支障が出る北海道住民にとっては死活問題である。早期の解決が望まれる。