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《初公判》「痛がって、これ以上刺せなかった。首を思い切り絞めました」加害父が明かす幼子2人との“最期の家族旅行”《九州3児遺体》

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田中涼二被告拘置所インタビュー#2

genre : ニュース, 社会

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『パパとバイバイする?』『バイバイせんよ』『バイバイ、ダメー』

 田中被告は大翔くんを自宅へ運ぶため、ポールの撤去を頼んでいたのだ。大翔くんの遺体を自宅に置いた田中被告は蓮翔ちゃん、姫奈ちゃんを連れて家を出る。

「大翔を死なせてしまった自分はもう死ぬしかない。2人を施設に預けて1人で死ぬか、3人で心中するか。そんなことを考えながら、自宅を離れました」

 警察からの追跡に備えて、2月18日に福岡市博多区でレンタカーを借り、田中被告らは“最後の家族旅行”へと出発した。向かった先は宮崎県串間市だ。

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「自分が10代のときに死んだ両親の墓があるんです。借金による自殺です。2人で外出先の車の中で、練炭で……。最初で最後になってしまいましたが、両親に孫の姿を見せてあげようと思いました」

 旅行でも楽しそうにはしゃぐ蓮翔ちゃんと姫奈ちゃん。さり気なく、田中被告は2人にこう尋ねた。

田中被告「パパとバイバイする?」

蓮翔ちゃん「バイバイせんよ」「バイバイせんよ」

姫奈ちゃん「バイバイ、ダメー」

「墓の前でも、車の中でも、自分と離れられるか2人に聞いてみました。離れられるなら施設に預けて、自分だけ死のうと思いました。でも、何回聞いても、2人とも泣きながらバイバイしない、と言ってくれたんです」

殺害現場となった鹿児島の観光ホテル(宿泊者提供)

 

 田中被告はそれからの数日間を、子供たちと野生の馬などが見られる串間市・都井岬の観光名所や、民宿で海を見るなどして過ごした。船を見て、蓮翔ちゃんが「船に乗りたい」と言い始めたという。

「昔、蓮翔と姫奈と、船に乗ったことがあるんです。姫奈は小さくて覚えていないようでしたが、蓮翔はよっぽど楽しかったようでそのときのことをよく覚えていました。

 この時には、何度聞いても『バイバイしない』という2人を見て、心中するしかないと決意は固まってきていました。それで、最期にフェリーに乗せてあげようと、桜島に向かいました」

 2月24日、レンタカーのガソリンはすでに切れていたため、車を商業施設の駐車場に置いたままにして、電車で鹿児島・桜島に向かった。桜島の観光ホテルに宿泊し、翌25日には3人でフェリーに乗った。

「フェリーにも乗れたし、蓮翔も姫奈も大きな風呂が大好きだから、すごく喜んでくれました。心中する決意は固まってきていたものの、まだ、どうすればいいのか、と悩んでいました。とても追い込まれていました」

 苦悩し続ける田中被告。しかし、2月26日が運命の日となった。