1ページ目から読む
3/3ページ目

車も家も子供も夢のまた夢の時代に……

 ここ10年ほどの間に、誰もが一寸先は闇、明日は我が身を経験して「貧困」が他人事だとは思えなくなったのは当然のことだと思う。

 そして今や共働きでなくては家計の維持は難しく、子育てをするならばそれまでにキャリアを積み重ねておき、出産後にスムーズに復職したいところだが、それもなかなか思い描いたようにはいかない。

 そもそも「結婚・出産適齢期である」と判断された女性は「どうせ辞めるだろうから」「産休の間、代わりを探すのが大変だから」とキャリアアップしづらいのが現状であり、たとえ本人に出産の意思がなくとも、適齢期の女性だからというだけで、同じ世代の男性よりも機会を奪われてしまう。

ADVERTISEMENT

 たとえ出産後の復職が可能な環境であっても、保育所が見つからなければ働くこともできない上、民間の保育所であれば保育料が高額で、月収と変わらないほどかかることもあり、それではなんのために働いているのかわからない。こんな状況で、少子化が解消されるはずがないのは明白である。

 かつては当たり前のようにライフプランに組み込まれていた「結婚」「出産」「マイカー所持」「マイホーム購入」が、もはや「普通」ではない時代になってしまった。

「若者の貧困問題」とは言いつつ、実際は若者だけでなくすべての世代がこの問題の当事者であり、一部の人々を除いては誰もが突然、貧困に陥る可能性が十分にある今、自己責任論で問題を矮小化し、その責任を国民同士で押し付けあっている場合ではないだろうにと思う。