30年前に若者だった世代からすれば、若者が子を産み、少子化を解消してくれなければ自分たちの老後の生活が保障されない不安は当然あるだろう。しかしながら「今の若者は努力もせず、欲もなく、結婚や子育てにも後ろ向きで社会に貢献していると言えない」といった不満があるとすれば、それは若者に向けるべきものではなく、不安定な雇用を生み出し、若者に投資してこなかった権力側に向けるべきものではないか。
氷河期世代の引きこもり実態調査を数年前まで行わず、対策を講じるでもなく見て見ぬ振りを続けてきたツケが現在の状況に繋がっているのではないか。
賃金は上がらず生活コストは増えていく一方
若者の貧困について言えば、賃金は上がらないのに、生活にかかる最低限のコストが増えていることも要因のひとつだろう。バブル期に比べて社会保険料は約2倍になり、消費税率も10%に達した。今やライフラインであり欠かすことができない通信費などの支出の増加により、都市部に暮らしている若者は、貯金もろくにできないほど可処分所得が目減りしている。
このように書くと今度は「都市部に住もうと思うからいけない」と横槍が入りがちなので念のため付け加えておくと、現実問題、地元や田舎では仕事がなく、あっても選択肢が少ないため都会に出るのであって、若者たちは決して、都会に住みたいから後先考えずに都会で就職しているわけではないのだ。
「子供は欲しいけど、現実的に考えると正直厳しい。自分ひとりで生活するのもやっとの状況で、貯金も十分にできない。年金には期待できないと思い、老後のことを考えてNISAやiDeCoを始めたけれど、今より収入が減ってしまったらそれも継続が難しいと思う」
私と同世代である30歳前後の人に話を聞くと、やはりほとんどが将来への不安を少なからず抱えていて、特に子供を育てることに関しては「養える自信がない」と答える人が多い。東日本大震災やコロナ禍を経てさらに景気は悪化し、身近な人が失職することもあれば、突然収入が途絶えるケースも嫌というほど目の当たりにしてきた。特に、コロナ禍において真っ先に解雇されたのは非正規雇用者であり、その多くは女性や若者たちであった。