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2007年の『4番工藤』に思いを馳せて…“消化試合”をどう楽しむか

文春野球コラム ペナントレース2022

 9月30日、閉店後の残業をひとしきり終えたところでパ・リーグTVを開く。ハムの試合は無い。パの優勝争いだ。首位ソフトバンクを追うオリックスは、今日勝てば最終戦までもつれる可能性が出てくる。相手のロッテはBクラスが確定。いわば消化試合。直前のカードでハムが14-0の大勝で引導を渡してしまったんだっけ。

 試合はロッテが9回土壇場で追いついたところ。藤原恭大のこの日2打点目となるタイムリー。そういえば藤原って引導を渡した翌日も活躍してたな。札幌ドーム最終戦。現地観戦で見せつけられたのは野村・清宮のアベックアーチじゃなく山口・藤原のそれだった。くそー。悔しいけれど、ちょっと良いものを見た気持ちもある。他球団の若手も来季どういう姿になっていくのかを想像するとちょっとワクワクするのも正直なところ。どんどん打つ選手になってくれ、ハム以外から。

消化試合で個人的に思い出す「4番センター工藤隆人」

 消化試合。もう順位なんか関係ない試合。若手を登用したり、来季に向けての様々なチャレンジをしたり、反対にベテランをスタメンで出して、思い出作りをしたりする試合。

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 消化試合で個人的に思い出すのは、2007年にリーグ優勝を決めた直後の試合だろうか。4番センター工藤隆人。「工藤ちゃん4番だってよ!」とスタメン発表からつい笑ってしまったものだ。普段では見られないようなオーダーに新鮮さを覚えるのも消化試合の楽しみだった。たしかその試合で塁を埋める敬遠四球があって「工藤ちゃん! さすが4番の風格!」なんて茶化したっけ。あれもたしか9月末の今頃だったなあと思いにふける。

工藤隆人 ©文藝春秋

 今季のハム、シーズン中盤以降は誰が4番だろうが「ふーん、そう来たか」くらいの感想だった。若手の登用、普段見られないようなオーダー。思えば今季はずっとそうしてきたんだった。関口宏の東京フレンドパークよろしく「2022年の日ハム、スタメン4番に座った選手は16人います。そのうち10人答えなさい」という設問があったらどうだろう、意外と難しいのでは。

 若手にチャンスを与える、中堅ベテランもいろいろ試す、とんでもないオーダーも普通に組む。どこまで本気だったのかはわからないが、BIGBOSSは就任会見で「優勝なんか目指しません」と言った。いま思えば、あれはもしかしたら遠回しに「今年一年は消化試合にします!」という宣言だったのかもしれない。

 一方、札幌ドームラストゲームのセレモニーでは「来季は日本一だけを目指します」と宣言した。BIGBOSSが種をまき新庄監督がそれを収穫するというペルソナリレー。しかし贅沢な使い方だよね、143試合を来季への種まきに使うのって。新球場元年に向けて丸一年を消化試合にしたんだ、なんとか結果を出して欲しいと思うよホント。

 あのセレモニー、基本的に楽しく微笑みながら現地で見ていたのだけど、「日本一だけを目指します!」だけじゃなく「2位も6位も一緒です!」と言ったところは思わず笑ってしまった。それは2位だったチームが言ってこそ映える言葉なんじゃないか。むしろ下剋上の余地をのこしておいたほうが良かったのでは。でもそれが新庄劇場。やっぱこの人は面白い。

 オリックスが9回裏にサヨナラ勝ちを決めた。これで最終戦までもつれる可能性が出てきた。そのときスマホに着信。

 文春ファイターズえのきど監督「急で申し訳ないけど、コラム代打やってくれない? 締め切りは明日で!」。「もう優勝決まってるから気楽にやって。ショートスターターでどう?」。優勝争いには関係なくても、そうそう気楽にやれないんじゃないかという『消化試合で急に登板を打診される若手投手の気分』はこんな感じだろうかと思いながらおそるおそる引き受けた。文春ファイターズにとっては消化試合だけれど、私にとっては大きなチャンスでもあるのだ。

 監督こんな感じでどうでしょうか?

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