盗塁王は「周りの人に支えられながらできた」
そして8月12日のファイターズ戦(ZOZOマリン)では自身が目標としてきた30盗塁の大台に乗せた。まだシーズン中盤での目標値達成。誰も髙部を止めることはできなかった。その後も走り、結果的にタイトル獲得に行き着いた。
「ここまで44個という数字を積み上げられたのは、とても大きな収穫だと思う。自分がやってきたことが評価されるという事は嬉しく思います。思い切って挑戦する気持ちであったり、一つ一つのプレーを大事にしてきたからの結果。そしてなによりもボクが走るにしても次の打者の方が待ってくれたり、サポートしてくれて走れている。周りの人に支えられながらできたと思うので、ボクの貢献というよりも周りの人と一緒に戦えたという思いが強いです」と髙部。タイトル獲得に際して周囲への感謝の気持ちを並べた。
練習の虫で、常に身体を動かしていないと気が済まないタイプ。オフに入っても気を緩めることなく、どん欲にさらなるステージを目指そうとしている。
「打率、ヒット数、盗塁数全てにおいて、もう一段階レベルアップする事が大事になってくると思う。今に満足することなくやっていきたい。しっかりと反省をして盗塁の技術向上もしていきたい。練習で積み重ねていきたい。自分自身と戦って伸ばしていきたいと思う」と熱く抱負を語る。
悔し涙を流したサヨナラ負け
今年の髙部を語る上で外せない試合がもう一つある。北の大地で悔し涙を流した4月6日のファイターズ戦だ。開幕から10試合目。10安打を放ち順調に開幕から突き進んだ中で落とし穴が待っていた。同点で迎えた9回無死一、三塁のファイターズ一打サヨナラの場面。相手打者が打ち上げた打球は髙部のいる左翼方向へと高く舞いあがった。ファウルになるか微妙なあたり。場面を考えると捕球をした場合、犠牲フライが成立することも十分に考えられる。捕球してホームへの返球で勝負するか、見送ってファウルとするか。わずかコンマ数秒の間に髙部に迷いが生じた。結果は左翼線の内側のフェアゾーンにポトリと落ちるヒットとなり、サヨナラ。自らの心の準備不足が招いた迷いが最悪の結果となってしまった。髙部は肩を落とし、人目はばからず、涙した。
「あの場面では迷いがあった。ギリギリまでどうしようかと迷って、最後はボールを見失ってしまった。あそこはたとえファウルになる打球だったとしても積極的に捕って、走者をホームで刺すという勝負をするべきだった。迷ったら前に出る。そういう気持ちを前もって固めて、もっとアグレッシブにいくべきだったと反省した」と髙部。
試合後、チームメートたちは温かく励ましてくれた。「明日も試合がある。切り替えて」「ずっと試合に出ていたら、こういうこともある」。敗戦を一身に背負いこんだ髙部を仲間たちは気遣い、いろいろな言葉で励ましてくれた。ありがたかった。そしてプロ野球とは長い月日を仲間たちと一緒に戦って、支え支えられ進んでいくものであるということを改めて感じた。なによりも自分らしく恐れずに積極的にプレーをすることを改めて誓った試合となった。髙部の原点ともいえる試合となった。
「まだまだ手応えという部分は感じられるには至ってないですが、数字が残ってきているという事に関しては凄くプラスに捉えています」と髙部。
2019年ドラフト3位と、今年4月10日に完全試合を達成した佐々木朗希投手と同期入団。「髙部さんは本当にすごい」と佐々木朗希も一目を置く背番号「38」のサクセスストーリーは今、始まったばかりだ。ここまでの挫折や失敗を乗り越えて、マリーンズの新時代を築いていく。
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