2021年4月不動産登記法が改正された。実際に施行されるのは2024年4月1日からである。この改正はあまり広く報道された印象がないが、実は相続について、大変大きな改正だった。背景となったのが所有者不明土地問題である。
所有者不明土地問題研究会の調査によれば、2016年において全国で所有者が不明である土地の面積は410万haに及び、これは九州全土の面積367.5万haを凌駕する。さらに同研究会の推計によれば、何の対策も講じないまま推移すると、2040年にはその面積は720万haまで拡大し、国土面積の2割、北海道全土の面積に匹敵する規模に膨れ上がるとのことだ。
「名無しの権兵衛」の土地が増える理由
こうした「名無しの権兵衛」の土地が増える要因の一つが、相続の際に相続人が、所有権移転登記を行わないことによるものだ。相続で得た大切な財産である不動産を多くの相続人が登記をしていない、そのために登記簿謄本を閲覧しても、現在の所有者が誰であるのか判然としないのである。なぜ相続人は登記を積極的に行わないのだろうか。
まず登記とは、法律上では第三者対抗要件にすぎない。つまり、当該不動産の権利を主張する者が現れた場合、その者に対して、自分が所有していることを示して対抗することができるという程度のものだ。
なぜ登記が進まないのか
登記はこれまで義務ではなかったので、必ずしもされてこなかったのが実態である。大都市圏にあって不動産価値が高いものであれば、いざというときに備えて自分の権利を主張、対抗できるようにしておくことにはメリットを感じやすいのだが、たとえば親から先祖代々のものだからと言って引き継ぐ地方の山林、あまり買い手がいそうにないような不動産などは敢えて登記をしておこうという動機付けがそもそもなかったのだ。
さらに登記が進まない理由としては、登記した際には登録免許税という税金が科せられることだ。税率は固定資産税評価額の0.4%。地方の土地でも面積が大きければ意外と金額は膨らんでしまう。登記にあたっては手続きも複雑で、戸籍謄本や登記事項証明書、住民票などの必要書類を揃えなければならず、少なからず費用もかかる。手続きは自分でもできるが、司法書士などに頼めば手数料を支払わなければならない。そうした費用をかけてまで、自分の所有を表明する必要を感じない不動産では、登記が行われずにきたのである。