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相続させたい不動産、自分が相続できる不動産にも…「相続登記義務化」の悪夢

2022/10/04
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 ただ、若干の規制緩和もあった。これまでは相続登記の際は、当該不動産を相続するすべての相続人の同意が必要だった。兄弟で相続していて、兄弟のうちの誰かがすでに亡くなっているようなケースもあるだろう。その場合は亡くなった人の相続人(たとえば甥や姪)に権利は移っている。今となってはなかなか連絡がつかないというケースも多いはずだ。そこで今回の改正では、自らがすすんで単独で自分の持ち分について登記できるようにして、登記しやすい環境づくりには一定の配慮がなされている。

“乱暴な措置”にどう対応すべきか

 しかし、24年4月以降のこの改正は、登記実務を担当する司法書士などには商売繁盛の特需といえようが、すでに相続を受けた人たちにも対象を広げ、登記を義務化するのは、3年という期限も含めてかなり乱暴な措置ともいえる。

写真はイメージ ©iStock.com

 特に相続した不動産で代々ちゃんと登記が行われてきていないものだと、登記をする際に過去の所有者の戸籍などをずっと追いかけていかなければならない。たとえば戦後まもなくの相続発生以降、登記されていないような不動産は世の中にはざらにある。実際に私自身、都内でビジネスホテルの企画立案を行っていた際、計画地の隣地にお宮があり、この区画も一緒に開発できればとても良い計画になるので、所有者にアプローチを試みたことがある。

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 ところが当該土地の謄本を調べてびっくり。所有者は昭和27年に登記された女性名。記載された本人の住所は今では表記が変わった昔の町名。こうなるともはや専門家に頼んで相当の時間をかけて調査していかなければならず、それ以上の探索はあきらめた。都内だってこのような土地はいくらもあるのである。

 国では一定の条件下であれば、期限内にできない場合、延長するなどの措置を施してはいるが、人によっては全く悪夢のような作業を要求される改正が24年4月から始まる。

 自分が相続させようと思っている不動産、あるいは自分が相続できるはずの不動産、一度登記簿謄本に目を通しておいたほうがよさそうだ。

相続させたい不動産、自分が相続できる不動産にも…「相続登記義務化」の悪夢

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