2018年は、地価の全国平均がバブル崩壊の1991年以来の上昇に転じたことが大きな話題になった。その裏で、土地所有のメリットより、固定資産税などの負担が重くて放棄される「所有者不明」が増えたことはあまり知られていない。実態を取材すると、不動産の中に「負動産」と呼ぶべき負の存在が広がっていることが明らかになってきた。

 JR大宮駅から旧中山道を南に歩くと、10分ぐらいの間に、古い家が歩道まで張り出している場所が2カ所ある。宿場町の旧家のような建物だが、1カ所は屋根まで壊れて危険なため、フェンスで囲われている。その登記簿には、最後の所有者変更は明治30(1897)年で、相続のためと書いてある。もう121年も前で、この年に生まれたとしても生きてはいない年齢だ。もう1カ所も昭和41(1966)年の所有者変更が最後だった。

※写真はイメージ ©iStock.com

 さいたま市役所で確認すると、2カ所とも、歩道の拡幅工事の際に所有者を探したが見つからず、買収ができていないという。フェンスは歩行者の安全のために市が約100万円で設置した。

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 ここは、歩道の拡幅で目立つ結果になったが、所有者不明土地は過疎地だけの問題ではない。あなたが近所を散歩すれば、庭木がのび放題になって雨戸が閉まった家は時々見かける光景のはずだ。

 マイホームがある人であれば、不動産登記は当たり前のことと思うだろう。確かに、建物を新築した時の登記は義務だが、所有者の登記は義務ではない。それが求められるのは、借金の担保になった時が多く、相続などで借金がない場合、放置しても登記するよう求められることはない。それが地方の山林などになると、固定資産税や草刈りなどの管理費用がかかるだけの「負動産」になるため、登記費用ももったいないと、放置される。