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所有者不明の土地が急増 もはや不動産は「負動産」だ

2019年の論点100

2019/03/21
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 家が立っていても、所有者が亡くなって放置されることもある。庭木が伸び放題で、隣の人が連絡も取れないという家の登記簿をとり、書いてある住所を探したが、見つからなかった。

 この地域は、公の地図で、固定資産税の計算にも使われる公図がでたらめなまま使われてきたことも課題だ。公図が間違っていると、同じ面積でも固定資産税が違う結果になることがある。筆者自身も、自宅の固定資産税を確認して、公図が現地と違うため、固定資産税を高く計算される間違いを見つけ、買った時までさかのぼって税金を返してもらった経験がある。比企ニュータウンは山を削って開発したのに、昔の公図をいまだに使っているため、その違いは筆者の自宅のそれとは比べものにならない。

※写真はイメージ ©iStock.com

 今の土地制度は、明治維新後の地租改正が基礎になっている。明治政府は、それまでの米を納める年貢を改め、地価に応じて現金を納める地租への変更を、明治6(1873)年に始め、8年でほぼ終えた。その基本は公図だった。公図をもとに地価を算出し、その3%が地租となった。そのため、測量をごまかす「縄のび」が横行したのに加え、測量技術の未発達のため不正確な公図が多い。

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 国は、51年から測量をやり直す「地籍調査」を始めたが、18年3月末時点で終わったのは52%。都市部では25%しか済んでいない。地租がもとになった固定資産税は負動産の足を引っ張り、所有者不明の原因のひとつになった。地租改正で整備された土地登記簿も、所有者を特定する役に立っていない。土地制度は明治以来の見直しを迫られている。

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