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所有者不明の土地が急増 もはや不動産は「負動産」だ

2019年の論点100

2019/03/21
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 有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)は、こうした「所有者不明土地」の総面積を、16年時点で九州より広い約410万ヘクタールと推計した。40年には北海道の面積に迫る720万ヘクタールと、16年の1.8倍近くに広がるという。

 地方から出てきた団塊世代の故郷で起きていることは、彼らが多く移り住んだ郊外の「ニュータウン」で、これから繰り返されるだろう。マイホームがある子供世代は、親の家を財産ではなく、使えない負動産とみなして相続登記を避ける可能性が高いためだ。

※写真はイメージ ©iStock.com

でたらめだらけの固定資産税

 埼玉県中央部にある吉見町では、高度経済成長期の1960年代、約80ヘクタールの山林が切り開かれ、「比企ネオポリス」が造成された。いま、ひな壇のように大谷石で囲われた区画が斜面に並ぶ団地には空き地が目立つ。「売り家」の看板、門の表札を外したままの家など、空き家も多い。登記簿を見ると、所有者が50年以上前に買った人のままの区画も多い。グーグルマップで検索しても、当時の住所はなく、なかなかヒットしない。ようやくあった住所に手紙を出しても、転居先不明で返ってきたものもあった。

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 そんな中から連絡をくれた人が、30年以上行ったことがない自分の土地を見たいというので同行した。東武東上線東松山駅から車で10分余りの現地につくが、自分の土地の場所がわからない。地図を頼りにたどりついた区画は雑草が生い茂っていた。一度、町から手紙で草刈りを求められたことがある。業者の紹介も同封されていたので頼んだが、その時だけだった。町役場からは、固定資産税の請求も来たことがないという。

※写真はイメージ ©iStock.com

 地元に住む人に聞くと固定資産税は払っているという。町役場に確認すると、最初は町外の人にも請求していると答えた。しかし、実例があると伝えると、家が立っていない区画は「雑種地」の扱いで請求していないと訂正した。

 隣の区画で雑草が伸びると、ヘビや害虫が出る。持ち主と連絡が取れないために、草刈り機を買って自分で刈る人もいる。ある地区の自治会長は、草を刈るだけでなく、連絡が取れない持ち主に無断で畑にする人もいると話す。持ち主からの苦情は連絡を取るきっかけと考えるぐらい困っている。その自治会は所有者不明の土地をゴミ置場にして、持ち主に連絡を求める看板を立てている。