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 なるほど、多くの人の悩みを解消するしくみを築き上げようとの使命が、坪内さんを掻き立てているのだ。同じく組織づくりについても、サステイナブル=持続可能性の高いかたちを模索してきた。

11年前、萩大島はジリジリ縮小するばかりでした

坪内 11年前に「船団丸」を立ち上げたときには、萩大島の漁業の状態はジリジリ縮小するばかりなのに打ち手がなく、未来が見えない状態でした。失うものなど何もなかったから、とにかく前に進もうと手探りでみんないっしょに歩き始め、そのまま続けてきただけというのが実感です。

 ただ、ひとつだけ心がけてきたのは、会社をやるならサステイナブルで誰も取り残さないかたちにしたいということ。「商店」と呼ぶのが似つかわしいような、家族的で泥くさく、関係の濃い昔ながらのコミュニティがいいなと思ってきました。

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©畑谷友幸

 だって、せっかく縁あっていっしょに働くことになった仲間が、言いたいことも直接言えず、陰でいがみ合ったりドロドロしているなんて嫌じゃないですか。うちはいつでも、スタッフ全員が互いに言いたいことを言いますよ。「お前ムカつくんじゃ!」「何を、辞めてやる!」などと平気で言い合う。でもそれを引きずったり持ち越したりはしない。次の日にお客さんから電話が鳴れば、「毎度、ありがとうございます!」とわだかまりなく元気に言える気風を保っています。

 そもそも萩大島という土地には、村ごと大家族みたいなコミュニティが残っていて、それをそのまま組織にも持ち込んだというだけなんですけどね。私がこの土地に惹かれて居着いてしまったのも、そんな濃い関係性をすてきだなと思ったからです。

©畑谷友幸

 おせっかいなくらいの関わり方を求めている人は、けっこういるように感じますよ。萩大島へ視察や取材に来た人から、「ここに就職したくなりました」という声は多く聞きますし。

家族的なつながりはいつも根っこにあります

「ファーストペンギン!」のテレビドラマや原作本には、坪内さんと漁師たちが激しくぶつかり合う描写が盛り込まれている。視聴者や読者はきっとハラハラしてしまうが、実際の当人たちは決定的に決裂するわけじゃないとわかってやっているというわけか。