文春オンライン

2022/10/06

坪内 そうですね、家族的なつながりはいつも根っこにあって、誰かが具体的に本気で辞めるってことはまずありません。私自身もやり始めたからには死ぬまで続けていくつもりだし、何なら私が死んでも組織は平気で回っていくよう手は打ってあります。株式会社は「公器」と考えているので、皆でつくって得たものは皆で分けるを繰り返し、いつまでも存続し続けるのが使命だと思っています。

 そうやって回していくうえでのコツをひとつ挙げるなら、ブランドを傷つけたり手放したりは決してしないことですね。ブランドさえ守られていれば、仮に何らかの事情で顧客がいったんゼロになっても、またイチから営業すればいいだけの話です。間違いのないもの、皆さんに求められるものを提供できるブランドであることが、まずは何よりも大切となるでしょう。

©畑谷友幸

 本当に地方創生が成るとはどういうことか?

学歴がなくて地方から動けない。第一次産業のイメージを変える

坪内 うちには幸い、若い人材が着々と集まってくれています。漁業をはじめ一次産業は慢性的な人手不足なのに、この点では我ながら健闘しているなと思います。

 一次産業の仕事に従事する理由って、これまではどこかネガティブでしたよね。学歴がないし地方から動けないので、しかたなく農業や漁業をやるといったイメージがあったんじゃないか。そうじゃなくて、いろんな職業と比較検討した末に選ばれる、カッコいい仕事として漁業があるようになってほしいし、うちはそれをある程度実現できているのではという自負があります。

©畑谷友幸

 漁業やりたい! 農業やりたい! という若い人が続々と出てきてこそ、本当に地方創生が成ったと言えるのではないですか? 実際、持続可能性を本気で考えて人間の根本に立ち返る生き方のほうが、いまは断然カッコいいじゃないですか。

 そうは言っても、漁師がすごくリッチなのかというと実際はそれほどじゃないですよ。ただ、大きい貯金なんてなくとも、ちゃんと働いていればまあ何とか楽しく暮らしていけるだろうという安心感は、都会生活の比じゃありません。そういう幸せのかたちもあるんだよと、広く知ってもらいたいです。