出版不況の中、部数を3倍にできたのには理由があった――。月刊誌「ハルメク」編集長・山岡朝子氏の「『ハルメク』成功の方程式」(「文藝春秋」2022年10月号)を一部転載します。

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「なんでそんな勉強をするの?」

「ハルメク」という雑誌をご存じでしょうか。主に50代以上の女性を対象とした月刊誌で、定期購読のみで書店には置かれていません。

 私は2017年8月に同誌の編集長になりました。就任時の販売部数が14.5万部だったのが、今では47万部。ちょうど5年で3倍になった計算で、販売部数で「女性誌ナンバーワン」にまでなりました。

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 この時代、雑誌といえば右肩下がりという前提が広くあり、その趨勢に逆行して伸びているのはなぜなのかと出版業界の外からも興味を持っていただくようです。今年に入ってからは「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)や、林修先生が司会の「日曜日の初耳学」(TBS系)で立て続けに取り上げていただき、そのたびにさらに1万~2万部増える好循環が生まれています。

 成果だけを見ると「カリスマ編集長」を想像されるかもしれませんが、私自身に天才っぽいところは何もないと自覚しています。

山岡編集長

 ただ、一般的な雑誌編集長との違いがあるとすれば、前職の主婦と生活社で編集長をしていた2015年に、経営大学院で経営学修士(MBA)を取得したことが挙げられます。出版業界では異色だったので、同業者から「なんでそんな勉強をするの?」と冷めた目で見られがちでした。自分でも当初は気恥ずかしくて「頼むからその話はしないで」と隠そうとしていたくらいで(笑)。

 それでも今では、経営学を学んだことがハルメクでの現在に生かされていると実感しています。

 編集長にはいろんなタイプがいて、面白いコピーや斬新なカットを思いつく「ひらめき型」や、誰もが驚くような人のインタビューを取る「人脈型」などそれぞれに個性があります。私自身は、読者に寄り添ってコンテンツを作るのが比較的得意な「共感型」と分析しています。