3つ目は、数字の理解です。
正直なところ、アカウンティング(財務会計)やファイナンス(資金調達)の授業は眠気との闘いでした。いくら数字が大事と言っても、編集長の立場では財務諸表を見たり資金調達を考えたりする必要まではなかったので。ただ、当時は予期していませんでしたが、ハルメクホールディングスの経営に加わることになってから役立つことになります。
4つ目は、人脈です。
いろんな業界の人と出会って話をするなかで自分の知らなかった視点を知ったのは大きな収穫でした。付き合いは今も続いています。
卒業までの3年間、仕事の時間は削れないので睡眠を削り、通勤や入浴時、歩きながらでも宿題を考え続け、授業でしょうもない答えを言ってしまって講師から「やめちまえ!」と怒声を浴びたことも。それでも新しい発想に出会う日々は刺激があり、とても楽しかったです。
卒業後は、社内で企画が次々と通るようになりました。社長や役員に対して論理的にメリットを説明できるようになったからです。
そして卒業から2年が経とうとする頃、転機が訪れました。
毛筆のヘッドハンティング
2017年の始め、会社に奇妙な手紙が届きました。和紙の封筒に、毛筆でしたためた宛て名。数多のリリース封筒の中でも目立っていて、知らない個人名なのについ開封してしまうだけの存在感がありました。
文面を見ると、「とある出版社が再建のために編集長を探していて、よかったら話だけでも聞いてもらえませんか」といった内容でした。
これがハルメクからのヘッドハンティングだったのです。
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月刊誌「ハルメク」編集長・山岡朝子氏の「『ハルメク』成功の方程式」全文と、ハルメクホールディングス代表取締役社長・宮澤孝夫氏による「我々は雑誌社ではない。シニアを幸せにする会社です」全文は、「文藝春秋」2022年10月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
「ハルメク」成功の方程式