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〈たった5年で部数が3倍の47万部に〉女性誌「ハルメク」編集長がMBAで学んだ“4つの力”

〈たった5年で部数が3倍の47万部に〉女性誌「ハルメク」編集長がMBAで学んだ“4つの力”

2022/09/11

 出版業界には、「取次(とりつぎ)」と呼ばれる流通業者を通して全国の書店に配本するという構造があります。取次に納品すればいったん全量の売上を得ることができるため、次の雑誌を作りたい出版社にとって便利な仕組みです。一方で、部数を出版社自身で決められなかったり、委託販売制度により返品を受けなければいけなかったりするジレンマも生じます。

 私が手がけた主婦雑誌でいうと、ライバル誌との付録合戦になっていました。規定の厚みに収まる付録を毎月必死に考え、銭単位でコスト計算する。編集者としてはその戦い方に違和感がありつつ、取次に評価され、書店のいい位置に置いてもらうにはそうせざるを得ないのです。せっかく売り場を確保しても、発売から1週間もすれば後方へ下げられるのを自分たちでは止められません。

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 そんな構造の中でしか戦えない閉塞感に悩み、より良い戦い方のヒントを見つけたかったのも、2012年に経営大学院に入った動機です。

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MBAで学んだ「4つのこと」

 グロービス経営大学院で学んだ3年間は、今やれと言われたらできないくらい大変でしたが、4つの大きな力を得ることができました。

 1つ目は、論理的思考力です。

 経営大学院を一言で表すなら、突き詰めてものを考えることを訓練する学校だったなと感じます。イシューをはっきりさせ、「AもいいけどBもありだね」という曖昧な意見は許されず、AとBのどちらが良いかを多方向からの根拠とともに表明しなければならない。普段の仕事ではなかなか鍛えられない力です。

 2つ目は、俯瞰する習慣です。

 それまでは自分の担当する雑誌に問題があれば場当たり的に対応するという姿勢でした。「この号をとにかく売らないと」「赤字だからコストを削ろう」と目先のことに右往左往して。 そうした立ち位置から引いて、木ではなく森を見るという視点を学びました。うまくいかない本質的な理由は何か、3年後や5年後、あるいは自分がいなくなった後にも継続させるにはどうしたらいいのかと考えるようになりました。