文春オンライン

2022/10/06

 原作本の出だしは、坪内さんの長男が幼いころの逸話から始まる。仕事で駆けずり回って家を空けることも多かった母親にふと伝えた長男の意外なひとことが、胸を締めつける。

 その後大きく成長して現在中学3年生になったという男の子は、母親の仕事や家族の暮らし、考え方をどう見ているのだろう。早くも漁師として生きる決意をしていたりとか?

©畑谷友幸

漁師たちにまみれて育った長男。「夢を聞いたらうれしかった」

坪内 彼は漁師たちにまみれて育ってきましたから、否が応でも影響は受けているでしょうね。ただ、いまの彼の将来の夢は漁師じゃないようです。どんな仕事に就いても心豊かに生きたいと言ってます。彼の話を聞いていたら、自分にとっての豊かさとは何だろうと真摯に考えた形跡が見てとれて、うれしかった。

 人それぞれに豊かさの概念は違うのでしょうけど、そこに目を向けて、自分の豊かさを目指して歩んでいくというのは大切なことでしょうね。私の長男が、「船団丸」の漁師たちからそうした生きる姿勢を学びとったのだとしたら、私がこの仕事に打ち込んできてよかったなと素直に思えます。

 

「ファーストペンギン!」のテレビドラマや原作に触れていただく方々にも、新鮮な気持ちや何らかの気づきを、すこしでもお渡しできたら本望です。

 きっと「これ、どこまで実話?」と疑問に感じるシーンがたくさんあるでしょうけど、基本的にすべてが実話ベースです。

 ああそうか、いまの日本ってこんな無茶をしたり好きなことを貫いたり、底抜けに明るく生きていっても何とかなる、まだまだ元気で可能性ある国なんだということを、私たちの悪戦苦闘ぶりを通して知ってもらえたらいいなと思います。

その他の写真はこちらよりご覧ください。

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