生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこでジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A5 遺伝性のがんは5%程度。まずは生活習慣の見直しを。

 よく、「うちはがん家系だから」という人がいます。家族や親戚など血縁者にがんが多いと、心配になるのは当然です。しかし、遺伝性のがんの割合は思ったほど大きくなく、全部のがんの5%ほどと言われています。血縁者にがんが多い場合、遺伝的な素因がある可能性はありますが、すべての人ががんを発症するわけではありません。がんには遺伝的な要因だけでなく、環境要因も関係しているからです。

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 たとえば、血縁者に喫煙者や大酒飲みが多い場合、他の人たちに比べてがんを発症するリスクは当然高くなるはずです。また、家族は一緒にごはんを食べることが多いので、生活習慣が共通しています。食べることが大好きでみんな太っていたり、塩分の濃い味付けを好む食生活をしていたりすると、家族全員で同じような病気になることがありうるわけです。

 したがって、もし「がん家系かも」と思った場合には、がんになりやすい生活習慣をしていないか、家族全員で見直してみることをお勧めします。「Q2 どんな人ががんになりやすいの?」を読んで、ぜひ予防してください。

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 ただ、遺伝的な要因の強いがんもあります。代表的なのが大腸がんの一種である「リンチ症候群」と「家族性大腸腺腫症」です。リンチ症候群は50代未満で発症することが多く、大腸がんに加えて子宮内膜や卵巣、小腸、尿管、腎盂など、さまざまな場所に腫瘍が合併するのが特徴です。また、家族性大腸腺腫症は大腸や胃、十二指腸などに100個以上のポリープが発症します。

 ですから、血縁者に若くして大腸がんになった人が何人もいる場合や、胃腸にポリープができやすい人は消化器の専門医に相談をして、定期的に内視鏡検査を受けるなど注意をしたほうがいいでしょう。

 また、血縁者に若くして乳がんや卵巣がんになる人が多い場合も、遺伝性のがんの可能性があります。これらは、BRCA1およびBRCA2という遺伝子に変異が認められた場合に発症リスクが高くなることがわかっており、全乳がんや卵巣がんの5~10%がこのタイプと考えられています。

 ですから、遺伝性のがんが心配な方は、乳腺専門医などに相談をしてください。また、遺伝カウンセリングの専門外来を開いている医療機関を「日本HBOCコンソーシアム」のホームページで調べることができます。「がん家系だから」といたずらに恐れず、リスクが高い人は専門医に相談をしながら、適切に備えることが大事だと言えるでしょう。

【参考】
「遺伝性腫瘍・家族性腫瘍」「人のがんにかかわる要因」(国立がん研究センターがん情報サービス)