警察官が大翔くんに『パパとママどっちがいいか』と聞くと…
判決文によると、田中被告と元妻A子さんは2017年2月に結婚。しかし、けんかが絶えず、2020年になり一度目の離婚をした。田中被告が実子2人を引き取り、福岡県飯塚市に転居したが、A子さんと3カ月後に再婚。それでもけんかは絶えず、部屋中を血の海にする警察沙汰のけんかを起こすなどして2度目の離婚に至ったのが同年末だ。
傍聴人によると、田中被告の家庭を担当していた児童相談所の職員は証言台に立ち、「A子さんは『こいつ』などと大翔くんにひどい言葉遣いをしていた」と述べたという。記者による取材でも、飯塚市の近隣住民が「A子さんが酒を飲んで暴れていた。臨場した警察官が大翔くんに『パパとママどっちがいいか』と聞くと大翔くんは『パパがいい』と話していました」と証言していた。
また記者が拘置所でインタビューをした際に、田中被告は自分の事を棚に上げ、「(A子さんは)子供のことを考えずに酒ばかり飲んでいて、任せられなかった」と話していた。
臨床心理士「衝動的ですぐに行動を起こすが社会的規範と照らし合わせないため、反社的な行動に抵抗がない」
しかし法廷に立ったA子さんはこう証言した。
「少しでも早く離婚するために親権は放棄したがいずれ取り返すつもりで広い部屋を借りていました」
さらにA子さんは田中被告について、
「実子2人を甘やかし、養子の大翔を差別していた」
「大翔にだけ、朝早く起きて準備させていた」
「大翔の嫌いな鶏肉を無理矢理食べさせていた」
など、養子の大翔くんだけを別扱いしていたと証言。そして子供3人を奪われた悲しみから「(田中被告が)生きていることが許せない。死刑にしてほしい」と訴えた。
弁護側の証人として出廷した臨床心理士で甲子園大学(兵庫県宝塚市)の浦田洋教授は、田中被告との複数回の面談や知能テストの結果を法廷で明らかにした。「知能指数(IQ)は67で、低い結果となった。1000人中、下から20~90番目くらいだった。そして一度に多くのことを覚えておくのが苦手で、社会常識が身についていない。特に苦手なのは見たものからすばやく行動を起こすことだ」という。また、特徴的な性格傾向として「衝動的ですぐに行動を起こすが社会的規範と照らし合わせないため、反社的な行動に抵抗がない」「行動を起こした後、自責の念を感じることはあるがそれは表面的かつ一時的なものなので再び同様のことをする恐れがある」といい「内省が深まらない」ため覚せい剤取締法違反や恐喝、青少年保護育成条例違反などで前科7犯、結婚も7人と計8回していることが明かされた。