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両親が自殺し、頼ることのできる親族が誰一人としていないまま人生を過ごす

 田中被告が浦田氏の面談で話したことと、被告を支援する「罪人の友 主イエス・キリスト教会」(埼玉県川口市)の進藤龍也牧師や記者に話したことは事実関係が食い違うことも多かった。例えば、記者には結婚は計4回と説明していたが、浦田氏には8回。ほかにも進藤牧師には「ヤクザ時代に懲役7、8年の大きいことをやったことがある」と話していたが、そのような懲役刑を受けた過去はなかったことが判明した。情状証人として法廷に立った進藤牧師は、こうした田中被告の矛盾点について、寛容な態度を示した。

「ヤクザは見栄っ張りですから、涼二(田中被告)もそうだったんでしょう。悔い改め、今ではそのような嘘はつかないと信じています」

進藤牧師 ©文藝春秋

 一人っ子の田中被告は両親が自殺し、頼ることのできる親族が誰一人としていないまま人生を過ごしてきた。前出の浦田教授によると、「自らもDVをうけていたことなどから両親に否定的で家庭内不和に不満を強く感じており理想の家族を追求していた」という。また、田中被告にとって、「料理を作り食べさせることが、子供たちへの愛情表現だった。大翔くんが苦手な鶏肉を吐くことから、自分の愛情を受け入れられていないと考えてしまった。単にものを吐くのは汚いという以上の意味があった可能性が高い」と分析した。

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田中被告からの手紙「ふるえが止まりません」「まだ判決もでてないのに恐い」

 判決直前、田中被告は進藤牧師に手紙(原文ママ)を書いた。

「こんなどうしようもないヤツをひろってくれて、生きて罪をつぐなわなければいけない、それが子供達へのつぐないになる、先生の一言ですくわれました。(中略)

 求刑無期刑になりました。まだ判決が出てないので安心はできませんが死刑はなくなったと思います。でも無期は無期それなりの心がまえが必要だし、まだ自分にそれなりの心がまえができていないせいかふるえが止まりません。恐いですね。まだ判決もでてないのに恐いですね」

約9年前の田中被告(上)と進藤牧師

 田中被告は塀の向こうで、無期懲役という判決が出た今、何を考えているのだろうか。進藤牧師が取材に応じ、こう明かした。

「涼二の事件は元ヤクザの社会復帰する大変さ、虐待の連鎖、頼れる人のいない家庭など、さまざまな問題を提起していると思いますが、胸が痛くなる話ばかりです。それでも悔い改めようと頑張る涼二と、私かあいつ、どちらかが死ぬまで付き合い続けます」