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“ゼロゼロ融資で全国初の行政処分”は現場の責任? 中日信用金庫の「組織ぐるみ不正を否定」想定問答集を入手

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A理事「わかっとると思うけど、うまくやれよ」

 不正を主導した人物として職員らが口を揃えるのが、業務推進部長のA理事とB専務理事だ(A氏は理事辞任の上、総務部付け、B氏は9月30日付で辞任)。

 ある店舗の営業職員が営業現場の実態を語る。

「A氏は、毎月、融資予定先をリストにした『融資増強計画』を策定し、かなり無理な営業成績の達成を各営業店に迫っていました。月前半にも達成が苦しくなると、A氏から電話で『この1社、どうするんだ!?』、『お前が月初にできると言ったんだろ!』と迫られ、穴埋めを要求される。2020年5月に民間金融機関のゼロゼロ融資が始まった際も、『わかっとると思うけど、うまくやれよ』と言われました」

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 A氏の背後で融資増強の号令をかけていたのが、上司に当たる専務理事のB氏だ。

「B氏は業務推進部を所管する一方、金庫内の人事権を握る権力者。A氏を理事に引き上げたのもB氏です。本来、営業のアクセル役を担う業務推進部に対し、審査を行う融資部がブレーキ役となってバランスを取るが、B氏は融資部長にも自身の子飼いを起用し、無理な融資に歯止めが利かなくなっていた」(同前)

 A氏とB氏が現場に強い圧力をかけた結果、不正が行われたことは当局にも伝わっていた。

「財務局の検査官からは聴取の際、『パワハラはなかったのか』と聞かれ、『あなた方は被害者です』と伝えられました。金庫内のヒアリングでも、常務理事から『情状酌量するから不正を正直に話すように』と指示がありました」(同前)

“組織ぐるみの不正ではなかった”と強調するよう指導

 当局から“組織ぐるみの不正”が認定された形だが、一方の中日信金は職員に“異なる説明”をするよう指示していた。