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――その後、酪農家を主人公にした初長編『ひかりのおと』(11)を作り、続く『新しき民』(14)もやはり真庭市を舞台にした時代劇ですが、どれもフィクション映画ですよね。実際にその土地に住みながら映画を作るスタイルといえば、山形で『ニッポン国古屋敷村』(82)などを製作した小川紳介さん率いる小川プロや、新潟で『阿賀に生きる』(92)を撮った佐藤真さんといったドキュメンタリーの映画監督たちをまず思い浮かべたんですが、山﨑さんが長編を撮る際にドキュメンタリーではなくフィクションという形を選んだのは、何か理由があるのでしょうか?

山﨑 そもそも僕にはドキュメンタリーとフィクションの垣根があまりないのかもしれません。小川さんや佐藤さんたちの映画も、ドキュメンタリーとはいえどこかフィクションとしても見ていた気がします。そういえば、やはり現地に住みながら映画を撮影していたことで有名なロバート・フラハティも、ドキュメンタリーと言いながら、『モアナ 南海の歓喜』(1926)のように、ほとんどフィクション映画といえる作品を作っていましたよね。

 ある地域を撮るうえで、そこに映る自然と人物とが乖離しないようにするためには実際に住んでみるのが一番なのは間違いない。逆に言えば自然と人間の関係をしっかり撮れればどんな形でも面白い映画が作れると思うんです。かっこつけた言い方もしれないですが、一生活者として、そこで感じるものを書き、撮影し、編集しながら、その都度生まれてくる最適な形で作っているだけという気がします。

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喋れば喋るほど、カンさんの魅力に取り憑かれていったんです

――『やまぶき』は、まさに山﨑さんが真庭市で暮らしているなかで、自然と生まれていった話なんですよね。

山﨑 ええ、劇中で山吹が参加するサイレントスタンディングは、実際にあの場所でずっと続けている人たちがいたことから思いついたし、真庭にふらっと住み始めた韓国人のチャンスのキャラクターについても同じです。サイレントスタンディングの場面では、実際あそこに立って活動をしている方々が多く撮影に参加されています。

 

――チャンス役を演じたカン・ユンスさんの個性的な経歴に驚いてしまいました。元々は韓国やイギリスで演劇をされていた方だそうですが、真庭に住み始めてからは、全然別の仕事をされているんですよね?

山﨑 そうなんですよ。元々カンさんは、「真庭市地域おこし協力隊」という市が行っているプロジェクトの一員として一家で真庭に移住してきたんです。僕も人から紹介されてお会いしたんですが、とにかく面白い人で、喋れば喋るほどカンさんの魅力に取り憑かれていきました。今は外国人向けのシェアハウスの運営をしたり、輸入家具の販売の代理店みたいなことをしたりしています。本人は「演技はもうやめちゃって、でもまたいつでもできるよ!」とすごくポジティブ(笑)。