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 そしてブルージェイズと契約して迎えた今年、労使交渉でキャンプ開始が遅れた影響でベンチ登録が28人に拡大されたチャンスを逃さず、プロ10年目でついに大リーグ昇格を成し遂げた。4月27日のレッドソックス戦では初安打となる左中間二塁打を放った。登録枠が26人に戻るタイミングでメッツに移籍し、その後は傘下の3Aでプレーした。

ブルージェイズでは、一塁手として出場した ©Dan Hamilton-USA TODAY Sportss/時事通信社

同僚が認める「デキるやつ」

 加藤の本職は二塁手だが、マイナーでは内野の全ポジションを守り、外野の両翼も経験したユーティリティプレーヤーだ。課題と言われた打撃も、昨季3Aでの活躍や今季オープン戦での打率3割3分3厘を見れば、日本ハムが期待するのが分かる。メッツの3Aでは7月上旬に5本塁打を放ち、週間MVPにも選ばれるなど確実に力を増している。

3Aスクラントン時代の守備練習。内野は全ポジションをこなす(筆者撮影)

 ただ、新庄監督がもっとも期待するのは、加藤が持つ「学ぶ力」なのではないか。新庄監督は2021年就任直後の秋季キャンプで、送球の軌道や走塁時のベースの踏み方など細部へのこだわりを見せた。阪神時代に打撃タイトルを取らなかった新庄監督が、メッツとジャイアンツでレギュラーに近い起用をされたのは、そういったこだわりが生む安定したプレーがあったからだろう。

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 ビッグボスは奔放な言動に相反して、細部と基本にうるさい人なのだ。加藤はそういった新庄イズムを理解して体現してくれる存在だと思われているのだろう。そして日本ハムの見立ては間違っていない。

幼少期に母から出された条件

 加藤はヤンキースのマイナーでは理論派として一目置かれていた。データシステムの「スタットキャスト」をいち早く取り入れて打撃練習に生かし、会話は論理的。アナリストとも対等に意見交換していたため、チームメートからは「デキるやつ」と目されていた。アジア系米国人は「ガリ勉」というステレオタイプの評価もあったかもしれない。「彼ら(チームメート)はほとんど大卒なんですけど」と苦笑しながらも、そういった評価は自覚していた。

 日本で教育を受けたことがなく、日本語の補習校にも通ったことがない。それでも理路整然と日本語で話すのは、両親が日本人だからというだけではない。勉強のたまものなのだ。少年時代にサッカーと野球を掛け持ちしており、週末に補習校へ通う時間がなかった。その時、母親から出された条件が「スポーツをやめるか、家で勉強をするか」だったという。

「勉強は嫌いじゃない、というか好きです。野球だって毎日勉強をしているような感じ」と話すように、優秀な成績をキープして、高校卒業後はカリフォルニア大学ロサンゼルス校への進学も決まっていた。