おかみさん視点で拓く古典落語の新たな地平
二ツ目の登竜門ともいえるNHK新人落語大賞では、2年連続で決勝に進出。林家つる子の実りの季節は近い。
高崎女子高の演劇部に入ると、難題とされるコメディタッチの男役を好演。それが「演じる」ことへの道を開いた。
「見に来た両親が『ひと皮むけたな』と言ってくるほどでした(笑)。他者を演じることが楽しかったんだと思います」
大学の落研で、落語の世界に一気にのめり込むとプロを志し、林家正蔵に入門。
「初めて高座を見た時、TVで見る“こぶちゃん”とのギャップに衝撃を受け入門を志願しました。師匠は前座時代から『女性にしか出来ない落語に挑戦しなさい』と背中を押してくれたので、二ツ目になってからチャレンジが始まりました」
演劇部時代から創作欲は旺盛。そこから生まれたのが古典落語を女性視点から見直す作業だ。すでに『芝浜』、『子別れ』をつる子なりの解釈で口演した。
「古典落語の世界観が大好きです。でも、とんでもない亭主に、『お前さん、ありがとう』って心の底から言えるのかなって疑問がありました。美談ではある。でも、私は納得して演じたかった。これまで女性視点の落語がないのは、歴史的に女性落語家がいなかったからだけなんですよ。明治時代に存在したら、きっと違う『芝浜』があったはずです。私は、新しい道を作っていけたらと思います」
つる子の視点で、江戸、明治の女性が生まれ変わるのは刺激的な落語体験だ。
〈#4に続く〉
<江戸> 林家(はやしや)つる子(こ)
「林家つる子独演会 クリスマススペシャル」
2022年12月24日(土)19時開演
東京・深川江戸資料館 小劇場
☎050-3497-5500
詳細は https://tsuruko.jp