中学生にして入信。そのきっかけは…
──そもそも、お母さまが入信されたきっかけは何だったのでしょう?
菊池 母が中学生の時に、兄である伯父が「一生歩けない」と言われるような大怪我をしたんだそうです。その時ご縁があって入信し、毎日お題目をあげていたら歩けるようになったそうで、「これは本当にすごい」と感激した母も入信し、母のすすめでほかのきょうだいも入信したと聞いています。
──お父さまは信者ではなかったと描かれていましたが、ご両親はどこで出会ったのですか?
菊池 もともと同郷で、中学校の先輩後輩だったそうです。中学生の時、父は生徒会長でわりと目立つ存在だったようで、母はその頃から父に憧れていました。
頭もよかった父は地元でいちばんの進学校に行き、母との縁はそこで一度途切れるのですが、数年後になんと同じ会社で働いていることがわかり、母が猛アタックして、結婚までに発展したようです。
宗教をめぐって生まれた「夫婦の溝」
──夫に対して入信を促すことはしなかったのでしょうか。
菊池 それが、どうやら父は「結婚したら入信する」と口約束していたみたいなんです。
でも実際は、父は入信しないどころか、信仰する母を無視したり、嘲笑したりするかのような態度を取り続けたので、母はそこに大きな落胆や絶望を感じるようになったのかもしれません。
──入信をめぐり、夫婦間に溝ができてしまったのですね。
菊池 生きていくうえでお互い大事にしているものが違うパートナーというのは、一緒にいても苦しいと思います。
私、父と母が二人きりで話しているところや、仲良くしている姿を思い出せないんです。父は典型的な「昭和のお父さん」みたいなところがありましたし、母にも頑ななところはあって、すれ違いが大きくなっていったんでしょうね。ある時期からとにかく母がずっと泣いてばかりいるので、さすがに子どもでも、どこかおかしいなと感じていました。