――プロデビュー後も同人活動を続けられていた理由は?
よしなが プロをきっかけに辞める人は少なかったです。他の作家さんも同人も商業も両方されていました。最近は、同窓会に近い感覚にもなってきましたね。年に一度、もしくは半年に一度会ってごあいさつして、新刊を交換してお互いの近況を知る、みたいな。近況と言っても「ええっ、いまそのジャンルなんだ!!」とかそんな話ですけど。ひさしぶりに懐かしい人に会うのもうれしいです。
――ちょうど時期もお盆と年末ですしね。
よしなが でも暑いし寒いし「よくもまあ、そんな時期にやってくれるもんだよ」「なんでゴールデン・ウィークとかスポーツの日じゃないんだ」とはずっと思ってますけどね(笑)。
「今年どうします?」っていう話になると「じゃあ新刊出すかぁ……」
――その場所でしか会えない人たちがいるからこそ続けられる?
よしなが 買って下さってる読者さんとの交流もとても大切ですし、現場での交流がなかったら、本当に何のためにやっているかわからなくなってしまいそう、と私は思っています。手売りがまったくできなくなる日が来たら、「通販だけで売るために描くのもなぁ……」という思いは正直あります。コロナ禍でもがんばって開催してくれたコミケのスタッフさんたちにも感謝の気持ちでいっぱいです。
――通販や投稿サイトも充実して作品を発表する場所は増えましたが、よしながさんにとってはあの空間あってこその同人活動なんですね。
よしなが よくサークルのスタッフさん達と「子供の頃のお店屋さんごっこみたいで楽しいよね」と話しています。終わったあとに「今日はこんな人が来てくれたね」とか「もっとああすればよかったね」と打ち上げで話すのも楽しい。20年以上の付き合いだけどイベントのときしか会わないから何の仕事をしているのかも知らない不思議な間柄です。「いま何にハマってるの?」みたいなオタ話だけで時間がいっぱいになっちゃうので。コミケがなくなると会えなくなってしまうから、それはイヤですね。
――実際にサークル参加すると、夏は暑く冬は寒くて過酷です。
よしなが それは本当にそうですね。こんなに文明が発達したはずの世の中で、温かいところに避難することもできず、ずーっと寒風に吹かれて寒さに震えているなんて「なんなんだ!」って毎回思います。床のコンクリートが寒いから段ボールを貼り付けるとか、そういう知恵ばかり身につきます。周りもだんだん年齢を重ねてきて、健康上の理由で辞める、という人も増えてきましたからね。私も今は参加していない友達から「よくやってるよね……」と言われたときには、自分でも「確かにな……」と思いました(笑)。
――それでもよしながさんとしては、あくまで現場にこだわっていきたい?
よしなが いや、そこまで強い気持ちでもないんですけど。ただ、スタッフや友達と話していて「今年どうします?」っていう話になると「じゃあ新刊出すかぁ……」って(笑)。少なくとも今年は出ます。