2023年1月からNHK「ドラマ10」枠で実写ドラマが放映される『大奥』。男女逆転というSF設定を用いた時代劇で、よしながふみさんによる原作マンガは2021年2月に最終19巻が刊行されて見事に完結した。同作は国内外のマンガ賞で高い評価を受けている。
よしながさんは、同人活動出身のマンガ家としても有名だ。長年にわたって「コミックマーケット(以下、コミケ)」にサークル参加を続けている。
7月に刊行されたインタビュー本『仕事でも、仕事じゃなくても 漫画とよしながふみ』(フィルムアート社)で、自身のルーツである同人活動や、コミケでできた人間関係の大切さなどについて語っている。
昨年12月にはコロナ禍で中止が続いていたコミケも2年ぶりに復活したが、感染対策などの理由で入場をチケット制にしたこともあり、入場者は以前の2割ほどの水準にとどまっている。同人活動を巡る状況が新しい局面を迎える現在、よしながさんに同人カルチャーへの愛を語ってもらった。
――最初に同人イベントにサークル参加したのは高校3年生の冬だそうですね。
よしなが その前から友達の同人誌に『銀河英雄伝説』(田中芳樹)の二次創作を寄稿してはいました。それで高校を卒業する時に、もう同人活動を辞めるつもりで記念に自分で同人誌を出しておこう、と思ったんです。「そういうことなら自分でサークル申し込みをしなさい」と友人に諭されて、「ごもっともです」と。それで自分でサークル参加することになりました。
「100冊か……。どうするんだろうな、これ……」
――そのときはどんな同人誌だったんですか?
よしなが 『ベルサイユのばら』(池田理代子)の二次創作でした。ただ『ベルサイユのばら』の連載が終了してすでに15年ほど経っていたので、「いったい誰が手に取ってくれるのだろうか……?」と自問自答したんですけど、「それでも記念だし出しておこうか」と。そういう感じでした。
――コピー本(コピー印刷された紙をホッチキスで束ねた手製の冊子)ではなく、ちゃんと印刷所にオフセット印刷を頼んだとか。
よしなが 自分でサークル参加する以上は「コピー本じゃあ格好がつかないなぁ」と思ったんです。あとは原稿が90ページを超えていたので、さすがにホッチキスの針が通らない。だったら刷っちゃったほうがいいな、と。それで印刷所に聞いたら、50冊刷るのも100冊刷るのも金額的には変わらないというので「じゃあ100冊で」とお願いしました。でもあとになって「しかし100冊か……。どうするんだろうな、これ……」と後悔しましたが(笑)。
――印刷所に入稿したまさにその日が、昭和天皇の崩御の日(昭和64年1月7日)とうかがいました。
よしなが そうなんです、たぶん1月末くらいのイベント(同人誌即売会)に参加したんだと思います。