――最初はコミケではなかったんですか。
よしなが コミケは当時から最大のイベントだったので、はじめて申し込むには規模が大きすぎて腰が引けたんですよね。コミックシティだったんじゃないかな? でも、私以外に『ベルサイユのばら』の同人サークルはいませんでした。なので、同じ話ができる仲間を探すには、やはりコミケに行くしかないと感じました。なにしろコミケには、どんなニッチな趣味の本でもありますからね。それで、すぐにコミケに申し込みました。
――コミケのサークル参加の申込手続きは、かなり煩雑ですよね。
よしなが そうなんですよね。冬コミに申し込もうと思ったら、その前の夏コミで申込書を手に入れなければならないし、申込期間も当時は3日間くらいしかありませんでした。しかも抽選。あらゆる書類に自分の住所を5箇所くらい書く必要があって、この事務手続きでふるいにかけられてしまう人もいるだろうな、と。申し込み金の振込とか、とにかく郵便局に行く回数が増えました。
――コミケにサークル参加して、いかがでしたか?
よしなが コミケでついに同じ『ベルサイユのばら』ジャンルのほかのサークルの方と出会えて、話しかけてくださいました。年上のお姉さまばかりで、学生の私を見て「あなたが描いているの!?」って。「若い人が好きになってくれてうれしい」「がんばってね」って声をかけてもらったのを覚えています。そうやってお友達……、と言うのもおこがましいんですけど、同じ作品を好きな方々と知り合うことができました。
「マンガの感想のお手紙はものすごく脳内麻薬が出るものなんだな」
――100冊の同人誌はどうなったんでしょう。
よしなが 何度かサークル参加しているうちに少しずつ売れていき、何年かかけて完売できました。そうすると、ポツリポツリとお手紙をいただくことがあったんですよ。自分の描いたマンガの感想のお手紙はものすごく脳内麻薬が出るものなんだな、ということを思い知りました。「私のマンガを待ってくれている人がいる!」という勘違いが起こってしまうんです。待ってないのに。
――ちなみにサークル名「大沢家政婦協会」の由来は?
よしなが これはTVドラマ『家政婦は見た!』の中で、市原悦子さん演じる石崎秋子が所属している家政婦紹介所の名前がモデルです。ドラマでは本当は「大沢家政婦紹介所」なんですけどね。同人活動のサークル名やペンネームって、深夜ラジオのラジオネームみたいなノリですから、割とひどいネーミングやダジャレが多いんですよ。
――よしながさんの同人誌というと『SLAM DUNK』(井上雄彦)の印象がとても強いです。『SLAM DUNK』とはどうやって出会われたんですか?
よしなが 友達に勧められました。単行本の7~8巻が出たあたりで、まだ三井が体育館でケンカをしている頃です。『SLAM DUNK』の序盤は(主人公の)桜木花道が柔道をやったりケンカをやったりしていたので、『ビー・バップ・ハイスクール』(きうちかずひろ)のようなヤンキーマンガになるのか、あるいはバスケットボールマンガになるのか、どちらになるんだろうと思っていました。ただ陵南と練習試合するエピソードのあたりで、「これはそういうこと(バスケ路線)なのかな?」と感じていたような気がします。