離婚して30年ローンで購入した中古の一戸建てを手放し、父から譲り受けた軽ワゴンで車中泊しながら、全国各地で漫画を描く。

 そんな日々を題材にした漫画『#離婚して車中泊になりました』。

 作者である井上いちろう氏(53)に、車中泊生活における苦労、車内での漫画創作の方法、車中泊生活下でのコロナ禍などについて、話を聞いた。

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日陰になる場所は取り合いなので詳しくは言えない

――ロマンを感じる車中泊ですが、やはり過酷な面も多々あるのではないかと。車中泊生活における苦労の最たるものってなんでしょうか?

井上 やっぱり、真夏の暑さと真冬の寒さ。まだ寒いほうが耐えられますけど、真夏は完全に無理ですね。夏は日が出るのが早くて、出ちゃうと車内はとんでもない暑さになっちゃうので。早朝4時に日が出て、6時には寝ていられない暑さ。窓を開けたり、扇風機をつけたり、標高の高いところに移動したり、いろんな工夫をしないと。

 エンジンはつけっぱなしにしないのでクーラーは使えず、3台の扇風機でなんとかしてます。扇風機は充電機能が備わっているので、走行充電して。間に合わない時は、ソーラーパネルでも充電しますね。

井上いちろうさんと愛車のスズキ「エブリイワゴン」

――「ここだったら、日の出の時に日陰になっている」みたいな、とっておきの場所はあったりしますか。

井上 あります。でもパーキングエリア、サービスエリアって、意外とそういうところがないんですよ。取り合いになるから、そうしてあるのか知らないですけど。

 それもあって詳しくは言えないけど、朝方、絶妙に日陰になっているところは、本当に数えるぐらいですけどあったりするので。ゆっくり寝たいなという時は、わざわざそこまで行きますね。

――逆に過ごしやすい時期というのは。

井上 実は梅雨ってゴールデンタイムで、最高なんですよ。梅雨の序盤は日の出も早くないので、9時ぐらいまで寝過ごせるんですよね。日中の太陽光の暑さよりも、湿気のほうがぜんぜん耐えられるので。なんだったら、梅雨時に「明日は雨です」と予報が出たら、雨を求めて那須のほうまで行ったりして(笑)。

 寒さに関しては、防寒すれば寝るのは大丈夫なんですが、体が硬直して仕事に影響しちゃうのでね。どれだけ体をあっためても、手だけが硬くなって漫画が描けない。そういう苦労は常に付きまといます。