10月25日、英国に“異例ずくめ”の首相が誕生した。リシ・スナク氏――インド系移民家庭の出身でヒンズー教徒、おまけに妻は「インドのビル・ゲイツ」と称される大手IT企業創業者の令嬢だ。
英メディアによれば妻との共同保有資産は1200億円で、颯爽と身に纏うのは特注スーツとプラダの革靴。700円のイヤリングで庶民派を打ち出した、トラス前首相とは対照的だが……。
「インドの金持ち」と批判されているが……
「政策の中身はむしろ真逆です。トラス氏が試みたのは富裕層に有利な減税で、いわば勝者の総取り。一方のスナク氏は“弱者への富の分配”に軸足を置いています」
そう分析するのは英国在住ジャーナリストの木村正人氏だ。
「スナク氏は産業が廃れた港町サウサンプトンで生まれ育ち『経済の地域格差を解消したい』と政治家を志しました。オックスフォード大学や金融大手企業で培った知識に加えて、幼少期から医師の父と薬剤師の母を手伝っていたため、医療政策の要であるNHS(国民保健サービス)にも精通している。
現状『インドの金持ち』という批判はありますが、英国民は現実主義です。政策によって生活が上向けば、スナク氏の手腕を正しく評価するでしょう」(同前)
鴨の羽色のネクタイに込められた「革新する意志」
政治家の印象戦略コンサルタントを務める乳原佳代氏(神戸情報大学院大学准教授)は「首相としての決意」をネクタイに見たという。
「多くがティールと呼ばれる青緑色で、ビジネス界では“進化型組織”を象徴するカラーです。上下の概念なく、メンバー全員で市場の変化に柔軟に対応していく。旧体制を革新する意志が読み取れます」
ティールの和名は「鴨の羽色」。荒波に負けず泳ぎ切れるか、スナク新首相の“華麗な足さばき”に期待したい。