寺田稔総務相(64)が、自らの関係政治団体「寺田稔呉後援会」への貸付金600万円について、資産等報告書や国務大臣等の資産公開資料に記載していないことが、「週刊文春」の取材でわかった。資産公開法違反及び大臣規範違反の疑いがある。
また、寺田氏は既に、別の貸付金1250万円について資産等報告書などへの不記載が発覚し、訂正したうえで「的確、厳格に資産として公開する必要がある。今後このようなことがないように注意する」(10月13日の臨時記者会見)などと述べていたが、実際には、更なる不記載があったことになる。
寺田氏は元財務官僚で、岸田文雄首相率いる宏池会の創設者・池田勇人元首相の孫娘・慶子氏と結婚。今年8月の内閣改造では、首相の右腕として重要閣僚である総務相に起用された。
「週刊文春」は10月6日発売号などで、慶子氏が代表の政治団体「以正会」の人件費を巡る“脱税疑惑”を報じてきた。10月20日発売号では、大臣秘書官・迫田誠氏への取材音声などを基に、秘書らに対する報酬の“上乗せ金”を、「以正会」経由で支払っていたことは源泉徴収を避ける目的があった旨を指摘(寺田氏は疑念を否定)。さらに、10月27日発売号では、関係政治団体の「寺田稔竹原後援会」が故人を会計責任者とし、収支報告を行っていた問題を報道。11月2日発売号では、同後援会が「寺田稔」宛の領収書を発行しており、実質的に寺田事務所と一体となって運営されていた疑いを報じた。
また、10月13日発売号では、寺田氏個人が、自らの関係政治団体「寺田稔呉後援会」に1250万円を貸し付けていたにもかかわらず、2017年と2021年の資産等報告書に記載していなかった問題も報じている。寺田氏は同日、臨時記者会見を開き、「週刊誌等の取材に対応する中で、再度、資産公開を精査したところ、貸付の記載が漏れていたことが判明した」などと説明。資産等報告書と国務大臣等の資産公開資料を訂正したことを明らかにし、「的確、厳格に資産として公開する必要がある。今後このようなことがないように注意する」などと述べた。
だが、寺田氏個人から「寺田稔呉後援会」への貸付金を巡り、新たな疑惑が発覚した。
「寺田稔呉後援会」の2011年分の政治資金収支報告書によれば、同後援会は寺田氏個人から2011年に600万円を借り入れており、実際、「資産等の内訳」欄にも600万円の借入金が記載されている。
さらに同後援会の2012年分の政治資金収支報告書によれば、同年12月25日にも寺田氏個人から1000万円を借り入れる一方、前年の600万円の借入金に関しては返済した旨の記述はない。そのため、本来であれば、2012年分の資産等の内訳欄には計1600万円の借入金が記載されている必要がある。ところが、同欄には1000万円の借入金しか記載されておらず、600万円分が不記載になっていた。
その後、同後援会は、2013年にも寺田氏個人から750万円を借り入れた一方、同年12月25日に500万円を返済しており、新たに250万円を借り入れた状態になっている。この250万円と前述の1000万円を合わせ、2013年分以降、2020年分まで同後援会の資産等の内訳欄には、寺田氏からの借入金は1250万円と記載されてきた。
すなわち、「寺田稔呉後援会」は2012年分以降、2011年の借入金600万円については資産等の内訳欄に一度も記載していないことになり、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いがある。