北陸の名門として知られる、国立大学法人・金沢大学。その巨大な附属病院のすぐ脇に「金沢先進医学センター」のビルがある。正面から見ると、まるで小判鮫のようだ。外観デザインは、附属病院にそっくりだが、金沢先進医学センターはあくまで民間クリニックである。ここで、2010年から自由診療の免疫細胞療法が行われてきた。
「2年前、金沢大病院の外来待合室にあるテレビで、金沢先進医学センターの免疫細胞療法が流れていました。こんな新しいがん治療もあるんだ、と思いましたね」(通院していた患者)
金沢大病院では、「再発の疑い」がある患者には、金沢先進医学センターで定期的にPET-CT検査を受けるように指示している。その待合室にも、免疫細胞療法のポスターが貼ってあった。そこにはこう記してある。
がんの再発を心配されている方へ
さまざまなステージ、さまざまながん種で治療が可能です
このポスターに強く惹きつけられた、と証言する患者もいる。
「私の場合、手術と抗がん剤治療がうまくいって、寛解(画像上、がんが消失した状態)になりましたが、再発が怖くて、免疫細胞療法を受けることにしたのです。金沢大病院の中にある施設ですし、センターで診てくれる医師も、金沢大の人たちなので安心できました」(前出とは別の患者)
民間のセンターを金沢大病院の関連施設と誤解
患者の大半は、民間の同センターを金沢大病院の関連施設と誤解して信用していたようだ。同センターのパンフレット(2020年当時)には、「金沢先進医学センターは、金沢大学附属病院敷地内にあり、密接な提携を結んでいます」という記述もある。露骨に強調しているとおり、同センターの診療は、金沢大病院で働く現役の消化器内科准教授らが担当していた。まして同じ敷地内にあるので、大学の施設と思うのが自然だろう。
金沢大病院は、厚生労働大臣から石川県の「がん診療連携拠点病院」に指定されている。県内のがん治療体制で、中心的な役割を担う存在でありながら、その敷地内で、“効かないエビデンス”しかない免疫細胞療法を10年余り続けさせていた。それには、理由があった──。