「息子の死を第三者委員会は『いじめ自殺』と認定しました。なのに、学校側がこの結論を拒絶するのです。こんな教育機関がこの世に存在して良いのでしょうか」

 そう憤るのは、2017年4月に自ら命を絶った長崎市の私立海星高校2年の男子生徒の両親だ。2人は11月4日、学校側に約3200万円の損害賠償と学校ウェブサイトへの謝罪文の掲載を求める訴訟を長崎地裁に起こした。

 生徒の父親は今回、訴訟を提起した目的をこう語る。

ADVERTISEMENT

「海星高は私学なので『独立性』が法的に尊重され、行政も手出しできません。だからと言ってやりたい放題が許されるのか。それを司法に問いたいのです」

男子生徒が自殺時に身に着けていた靴やバッグ

 この自殺事件を3年間にわたり取材したノンフィクション『いじめの聖域――キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』(文藝春秋刊)を著したジャーナリストの石川陽一氏はこう語る。

「ご両親は学校側とのやり取りをほぼ全てメモ、録音しており、膨大なデータを私に託してくれました。そこに残されていた生々しい会話の記録から、信じられない不誠実な対応の数々が浮き彫りになったのです」

 最初は当時の武川眞一郎教頭(現校長)による自殺の“偽装提案”だった。

「息子の自殺から1週間後、『突然死したことにしないか』と持ちかけてきたのです。その翌日には『転校したことにもできる』と打診されました」(父親)