島根県出雲市の島根大学医学部附属病院(以下、島根大病院)で、腎臓内科の医師7人が年度末までに退職する意向があることが「週刊文春」の取材でわかった。医師7人全員の一斉退職となれば、島根県の腎臓医療が危機に陥る可能性がある。
腎臓専門医を育てた指導医の退職意向がきっかけ
島根県の腎臓内科医・A医師が語る。
「島根県は、20年ほど前までは県内に腎臓専門医が国内ワーストの9人しかいなかった。そんな状態から、1人の指導医が腎臓診療を進めて後進を育成。今年5月現在、島根県内の腎臓専門医は27人まで増えました。今の県内の腎臓専門医はほとんどがその先生の教え子なんです」
全国的に有名な医師の名は伊藤孝史氏(54)。1992年に広島大学医学部を卒業後、2005年に島根大病院に講師として着任した。日本腎臓学会の幹事を務め、島根大病院では准教授として「ワーキング・イノベーションセンター」センター長も務めている。
「現在、島根大病院の腎臓内科には、伊藤医師を含めて7人の医師が所属しています。役職は、伊藤先生が『診療教授』で、2人が助教、ほかの4人は医科医員です」(同前)
この伊藤医師が来年3月末で退職する意向を固めたという。
「それに伴い、伊藤先生の下についている大学病院の腎臓専門医6人のうち2人が『これまでのように、地域医療ができなくなるから』と、同じく3月末での退職を決意。残りの4人も『伊藤先生の転職先を見てから、ついていくかどうか決める』と言って移籍先を探している状況です」(同前)
島根県西部で働く腎臓専門医・B医師はこう危機感を抱く。