文春オンライン

2022/11/12

 今月23日にベストアルバム「いつも何処かで」のリリースが控えていることもあって、選曲は桑田佳祐のこれまでを総括しつつも、今、そして未来を見据えたライブとなった。

 1987年にリリースのソロ名義デビュー曲「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」や、先の東京オリンピック・パラリンピック応援ソングだった「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」、果ては最新作となる「なぎさホテル」まで多彩な楽曲を披露していった。

 サザンオールスターズとしてデビュー以来44年、ソロ活動を始めてからでも35年。第一線を走り続けてきたことの凄みを、改めて感じさせられる。

 そして、新曲「なぎさホテル」は、ベストアルバムのために書き下ろされた楽曲だ。かつて逗子にあったリゾートホテルの佇まいを、郷愁たっぷりの詞と曲で表現している。

 

 作家・伊集院静の作品にも同名の自伝的随想があり、桑田は「なぎさホテル」をタイトルにしたことを、伊集院へ手紙で報告した。すると、すぐに丁寧な応諾の返信があったという。

 仙台在住の伊集院は、今回のライブの観覧は叶わなかった。だが当日の楽屋には、伊集院からの心尽くしとして、仙台銘菓「萩の月」が届いていた。

「またすぐに帰ってきます!!」

 ヒット曲が続々繰り出されるステージをさらに盛り上げたのは、演出の数々だ。MCで少々ぎこちない宮城弁を喋ってみたり、宮城県民謡「大漁唄い込み」を歌い上げたりと、まずは随所に「ご当地ネタ」をしっかり盛り込む。

 また、スローテンポな曲を演奏する前には観客に呼びかけ、

「まあちょっと座っててください、せっかく取ったお席なんですから」

 と着席を誘導。古くからのファンは自身と同じく年齢を重ねているので、立ちっぱなしじゃ辛かろうと察してのことだった。

 全曲を歌い終え、深々と頭を下げた桑田は、人懐こい声で、

「またすぐに帰ってきます!!」

 と約束の言葉を残し、ステージを去っていった。

 

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