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老舗立ちそば「二葉」 限定7食「いかかき揚」に出会った

天ぷらをつゆに浸す冬

2018/01/23

genre : ライフ, グルメ

note

若大将が教えてくれた人気の天ぷらベスト3

 奥のバットには「かき揚げ天」、「にんじん天」、「ごぼう天」、「ちくわ天」。手前左には「げそ天」、「いか天」、「しゅん菊天」、「貝柱かき揚げ」、手前右には「あじ天」、「きす天」、「しい茸天」、「玉ねぎ天」、そして「あさりかき揚げ」。かき揚げリングで丸くあがっていて、しかも丁寧にいとおしむように配置されている。朝5時前から天ぷらを揚げていく。だから開店時(口開け)に行けば、揚げたての天ぷらがいただけるのだ。

 

 若大将に人気の天ぷらベスト3を聞いてみたところ、1番人気は「しゅん菊天」でダントツ。2番人気は「玉ねぎ天」、3番人気は「しい茸天」だという。「二葉」といえば「あさりかき揚げ」というイメージだったのだが、予想外の回答なので驚いた。「しい茸天」は大き目のしい茸3~4個をかき揚げにしたタイプで、他ではお目にかかれない。

それでも食べたい傑作「あさりかき揚げ」

 それでも私は今回も、ここ十数年常に同じ注文と決めている「あさりかき揚げ」を注文した。「あさりかき揚げ」は二葉の傑作だと思う。

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 しばし待って「あさりかき揚げうどん」430円が着丼した。まずひと口つゆを飲む。返し(むらさき)の程よい旨さとかつお節の出汁がじわじわと感じられるアツアツのつゆだ。やはり「江戸っ子は熱いのがお好き」なんだろう。丁寧なつゆだ。

傑作は430円

 そして、天ぷらはすぐがっついてはいけない。つゆにゆっくりと浸して少し待つ。すると天ぷらは命を吹き込まれたように旨みが花開く。そうしてようやく口に運ぶと、あさりの味とほんのり苦みのあるネギの香りが口いっぱいに広がっていく。

 時間が経つと揚げ置きになる天ぷらをどうしたら美味しく食べてもらえるか、ずいぶんと試行錯誤したそうだ。衣はやや水分を少なめにして、しっかりとタネに纏わせて、時間をかけて揚げていくそうだ。注文後に揚げるようなサクッとした流行りの天ぷらではない、立ち食いそばのために考案された、立ち食いそばのための天ぷら達。