「週刊文春」が政治とカネの問題を相次いで報じてきた寺田稔総務相(64)が11月20日、岸田文雄首相に辞表を提出した。岸田政権にとっては3人目の大臣辞任となり、大きな政治的危機を迎えた。

 妻の政治団体による脱税疑惑を皮切りに、「週刊文春」は関係政治団体が故人を会計責任者にしていた事実など、寺田総務相の問題を毎週、報じてきた。一連の報道を再公開する(初出:週刊文春 2022年11月3日号 年齢・肩書きは公開時のまま)。

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 寺田稔総務相(64)の政治団体「寺田稔竹原後援会」が、故人を会計責任者とし、収支報告を行ってきたことが、「週刊文春」の取材でわかった。有印私文書偽造の疑いがある。

 寺田氏は元財務官僚で、岸田文雄首相率いる宏池会の創設者・池田勇人元首相の孫娘・慶子氏と結婚。今年8月の内閣改造では、首相の右腕として重要閣僚の総務相に起用された。

国会答弁する寺田氏 ©時事通信社

「週刊文春」は10月6日発売号などで、慶子氏が代表の政治団体「以正会」の人件費を巡る“脱税疑惑”を報じてきた。10月20日発売号では、大臣秘書官・迫田誠氏への取材音声などを基に、中坂智明秘書(現公設第二秘書)らに対する報酬の“上乗せ金”を、以正会経由で支払っていたことは源泉徴収を避ける目的があった旨を指摘。これに対し、寺田氏は国会で「秘書を通じて、ある請負者に支払った」などと答弁し、疑惑を否定している。

 その寺田氏に、政治資金を巡る新たな疑惑が浮上した。

 問題の政治団体は、「寺田稔竹原後援会」だ。

「寺田稔竹原後援会」の外観

「竹原市は、池田勇人元首相の出身地で、呉市に次ぐ票田。寺田稔竹原後援会は毎年、新年互礼会を開いています」(支援者)

 同団体は、広島県選挙管理委員会にも寺田氏の国会議員関係政治団体として届け出がなされている。収支報告書によれば、2012年以降の収入は毎年600万~900万円台で、大半は、寺田氏が代表を務める「自由民主党広島県第五選挙区支部」からの寄附。「寺田稔竹原後援会」の代表は池田勇人氏の娘婿・池田行彦元外相の元秘書で、2人の事務担当者のうち1人は「以正会」から人件費を受け取る女性事務員、もう1人は昨年の衆院選で、寺田氏の「選挙運動費用収支報告書」の事務担当者を務めていた。

「寺田稔竹原後援会」の収支報告書

 この「寺田稔竹原後援会」で会計責任者として登録されているのが、X氏である。

「X氏もまた、池田行彦元外相の秘書だった人物で、2008年から『寺田稔竹原後援会』の会計責任者を務めています」(同前)

 政治資金規正法では、収支報告書の提出義務を負うのは会計責任者と定められている。実際、2019年と2020年分の収支報告書にはX氏の実名が記され、捺印もされた「宣誓書」が添付されていた。X氏は〈政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません〉と宣誓しており、日付は2020年5月29日(2019年分)と2021年5月25日(2020年分)となっている。

〈真実に相違ありません〉と宣誓したのは…

  だが、X氏の妻はこう証言する。

「夫は2019年10月19日に78歳で亡くなりました。池田先生の秘書を8年間務めた後、石材を扱う会社を経営していた。その後も支援者として長年、寺田先生の選挙を手伝ってきました。亡くなったことは寺田先生もご存じです」