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「自殺した患者の存在さえ“口説き“の道具に」女性患者を信頼させて性的関係に持ち込む精神科医のあまりに卑劣な“手口”とは【鹿児島精神科の不倫・女性患者自殺トラブル】

「自殺した患者の存在さえ“口説き“の道具に」女性患者を信頼させて性的関係に持ち込む精神科医のあまりに卑劣な“手口”とは【鹿児島精神科の不倫・女性患者自殺トラブル】

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 C子さんが自殺した際、X氏はC子さんの親族に、関係を持ったのはC子さん1人だけと伝えていた。しかし米田氏が直接会った元患者の他、インターネット上でX氏の情報を募った結果、実際には他にも複数の女性患者と性的関係があり、診療の際のわいせつ行為や性的なアプローチを受けた女性も含めるとその数は10人以上にのぼった。

「調査を始めて、次々に被害女性が出てくるので驚きました。その女性たちから提供されたLINEやメールを見ると手口がいつも一緒で、X氏はまるでゲーム感覚のように感じました。ソフトで優しそうな口調で信頼関係をつくり、『あなただけは他の人と違う』というような特別扱いをする。強く出たかと思えば、『死にたい』『もう病院を閉じる』と弱みを見せるのも常套手段で、診察で知った家族構成や悩みさえ口説きの道具にしていました」(同前)

X氏(左側)が不倫関係にあった患者女性と交わしたLINE。弱みを見せる手口は多数の被害女性に共通している

 患者だったC子さんが自殺し、約2年後にはクリニックの職員だったA子さんも自殺しているが、X氏はそれすらも“武器”にしていた。

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「自殺してしまったC子さんやA子さんの存在すら利用していたのは本当に許せません。『自分のせいで患者を死なせてしまった』と悩みを吐露するように見せて、別の女性の気持ちを引きつけようとしていたんです。金を貢がされている被害者もいて、まさに“搾取”と言えるのではないでしょうか」

「精神科医が患者と性的な関係を結ぶのがタブーであることは明白」

 X氏は診療報酬詐欺などの事件では2020年2月に執行猶予つきの有罪判決が確定しているが、現在行われている民事訴訟の口頭弁論でも、精神科医と患者が性的関係を結ぶことについて「必ずしも問題はない」と主張している。

米田倫康氏

「問題ないわけがないですよね。日本精神神経学会は2014年に倫理綱領を作成して、患者に対する『乱用と搾取の禁止』という項目を制定しました。さらに2021年には細かいルールを作り『診療の相手方に対して性的接触を図る行為』は地位の乱用に当たり不適切だとしたうえで、『自らの優越的立場を利用した性的搾取は特に深刻な反倫理的行為』としています。業界としても、精神科医が患者と性的な関係を結ぶのがタブーであることは明白です」(同前)

 さらに、問題行為を起こした医師の免許についても厚労省に新たな動きがあるという。

「精神科医に限らず、患者に対する性犯罪で有罪が確定した医師は免許剥奪になりますが、お金を払って示談に持ち込み、刑事裁判を回避することで医師を続ける人も多い。しかし厚労省で、民事裁判で認められた事実なども医師免許の停止や剥奪に適用するという動きが出てきているんです。X氏が剥奪の対象に該当する可能性も十分にあると考えています」(同前)

 精神科医という人間のやわらかい部分を取り扱う職業の人間が悪意を持っていた場合、患者の側にそれに対抗する手段はほとんどない。より厳密なルールと運用が求められる。

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