文春オンライン

東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた

2022/11/30

genre : ニュース, 社会

note

時代の寵児がなぜ指名手配されたのか

 ビジネスマンとしての経歴以外には、自民党金融調査会の講師や、党デジタル社会推進本部のプロジェクトチームの有識者として招かれている。本人のツイッターによると、安倍晋三元首相の国葬にも参列しており、政界からの同氏への信任の厚さも見て取れる。

小田玄紀氏のTwitterより

 そんな時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか。

 前出の指名手配書の、告訴事実の詳細が綴られている欄には、詐欺以外の罪名も並んでいる。それらを要約すると、小田氏に対する嫌疑は以下の3点になる。

ADVERTISEMENT

・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い

・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い

・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い

筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書

協業関係に亀裂が走ったきっかけ

 しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。

「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者)

 そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。

「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)