「素人が笑わせようと思ってやるほどみっともないものはない。とにかく真剣に練習に練習を重ねること。それでも間違えてしまったりするからみんなが笑えるんだ」
遠藤周作さんの言葉を真摯に受け止めた、林真理子さん。日本を代表する作家が、「遊びの場」でも全力を尽くす姿とは? 大ベストセラー『野心のすすめ』から9年ぶりとなる話題の新書『成熟スイッチ』より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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素人こそ本気で
「エンジン01文化戦略会議」のイベントで私がさまざまなコスプレをしたことは、もしかしたらご存知の方もいるかもしれません。とくに2013年、きゃりーぱみゅぱみゅさんに扮した私の画像は世間に衝撃を与えました。
「誰か止めてやれなかったのか」
「なんか物凄いものを見てしまった気がする」
ネットニュースなどでも大いに拡散され、物議を醸したものです。2017年にピコ太郎さんのコスプレをした時にも、「ついに性別の壁も越えた……」と大きな反響をいただきました。こういう時に、適当にやるなんてありえません。命を懸けるぐらい本気でコスプレするのが私の矜持です。
遠藤周作先生(1923~1996年)が座長を務めていた素人の劇団「樹座」の舞台に、私は何度か役者として登場したことがあります。
1989年には女優の松坂慶子さんが演出を担当した『椿姫』でカルメンを演じ、舞台上で「ハバネラ」を歌い上げました。
遠藤先生は、素人が役者として公衆の面前で演技を披露する時の鉄則をよくおっしゃっていました。
「素人が笑わせようと思ってやるほどみっともないものはない。とにかく真剣に練習に練習を重ねること。それでも間違えてしまったりするからみんなが笑えるんだ」