「彼女は自虐ネタの入れ方が抜群に上手い」――コピーライター、作家、座談の名手として、これまで多彩な才能と共に仕事をしてきた林真理子さん。

 そんな林さんが「会話の天才」と太鼓判を押す「新潮社の名物編集者」とはいったい? 大ベストセラー『野心のすすめ』から9年ぶりとなる話題の新書『成熟スイッチ』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/#1を読む)

林真理子さんが太鼓判を押す新潮社の名物編集者・中瀬ゆかりさん ©文藝春秋

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「毒」を入れるテクニック

 クローズドな会食の場で、気の合った仲間と話す内輪話は格別な味わいです。

 私はかねてより「酒席で悪口を言わない人は信用ならない」と言ってきました。ただし断っておきたいのは、私の言う「悪口」とは「ちょっと毒のある噂話」です。

 ストレートすぎる悪口は下品ですし、場をしらけさせてしまうだけ。年をとってネガティブなことを言いすぎると人間性を疑われます。そこは注意しつつ、私は人脈は豊富なのでネタとなる情報はたくさん入ってきますから、面白い噂話には自信があります。

林真理子さん ©文藝春秋

 悪口を楽しむ上で大事なのが、その場にいる人たちみんなが嫌っている人の悪口しか言わないこと。メンバーの人間性や感覚を考慮すれば、彼らがどういう人の悪口を聞きたがっているか判別出来るはずです。

 そこを読み間違えて皆がどうでもいいと思っている人の悪口を言うと、「もしかして、そんな人のことまで気にしてるのー?」となってしまう。ちょっとどぎついことを言いすぎて「ハヤシさん、実はライバル視してるんじゃないのー?」なんて言われるのも絶対に避けたいので、「毒」の加減も調節しなければならない。