この人たちなら賛成してくれるだろうと見計らった人の悪口を的確に言うわけで、非常に高度なテクニックが必要とされるのです。ただ、そうして苦心して紡ぎ出す悪口は、その場をとても盛り上げてくれます。
会話で盛り込む毒の入れ方にも工夫が必要です。ある女優さんがこう言いました。
「私、Aさんと林真理子さんて、ずっと同じ人かと思ってたー」
当時、Aさんはとても売れている作家でした。そこで私はまず、
「私、あんなに下手じゃありません」
そしてすかさず、
「私、あんなに売れてません」と付け加えるのです。「あんなに下手じゃない」で毒が入り、少し緊張が走りますが、「あんなに売れてない」と言い足すことで毒が薄まり、プラスマイナスゼロになるわけです。
自慢話をしたい時にもコツがあります。それは「物語」を作ること。
たとえば、まだ娘が幼かった頃に、ある有名人家族と、家族同士で食事をしたことがありました。その時の話も、ただ「一緒にご飯を食べた」という話にすると単なる自慢話になってしまうので、「うちの娘が帰りたがって大変だった」という話にするのです。実際に娘が「うちに帰ってテレビが見たい」と駄々をこねたのですが、そこを強調するわけです。
会話の天才・中瀬ゆかり
いつも会話の天才だと思って感心するのが新潮社の有名編集者の中瀬ゆかりさん。中瀬さんとは仲よくさせてもらっていますが、彼女は自虐ネタの入れ方が抜群に上手い。
中瀬さんと郷ひろみさんのコンサートに行ったことがあって、終了後に一緒にラーメンを食べていた時、彼女は思い詰めたようにこう言いました。
「ひろみさんて本当にカッコいいですよねー。わたし、ひろみさんの前で裸にならなきゃいけなくなったら自害します」
自害するなら脱がなければいいじゃん、と思いながら、すごく面白くてかわいくて爆笑しました。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。