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 2005年に展望室付きロマンスカーの新車として50000形「VSE(Vault Super Express)」が登場する。ここで本来は老朽化した7000形と置き換えるはずだった。しかし、10000形をリフォームして車いすに対応するには大がかりな改造が必要だ。そこで、10000形HiSEを先に廃車し、7000形LSEを延命させたほうが安上がりという判断となったようだ。こうして7000形LSEは歴代ロマンスカー車両のうちでもっとも長寿な車両となった。

 2016年10月に70000形GSEの構想が発表されると、7000形の去就が噂されるようになった。順当に考えれば70000形GSEと交替で廃車だ。他方で、2018年に小田急電鉄の代々木上原~登戸間の完全複々線化によって通勤退勤時間帯のロマンスカーが増発されるため、しばらくは延命されるという予測もあった。

報道公開された70000形GSE 撮影/筆者

 小田急電鉄は当初、7000形LSEの引退時期は明確にしていなかった。しかし、2017年12月5日の70000形GSE報道公開で、小田急電鉄の星野晃司社長から「70000形GSEは2編成製造し、第1編成は3月17日のダイヤ改正から使用開始。第2編成は2018年度第1四半期の早いうちに導入する。それまでは70000形GSEと7000形LSEを同時に観られる」とのコメントがあった。つまり、第2編成投入以後は7000形LSEを観られない、という意味となる。

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3月のダイヤ改正以降、短い期間だが5種類のロマンスカーの競演が見られる

 星野社長は「GSEの2本目の導入時期は、工数の都合もあるとはいえ、わざとずらした」と語った。「LSE、EXE、VSE、MSE、GSE、5種類のロマンスカーの競演を、短い間とはいえ、鉄道ファンの皆さんに楽しんでいただきたい」とも。

 そういえばVSEの第1編成、第2編成は、落成時期は異なっていたけれど、運行開始日は同じだった。GSEの第1編成と第2編成の運行開始日を離した理由は、ロマンスカーファンへの粋な計らいと言えそうだ。

車内のドアに貼られているLSEのロゴ

 ちなみに、先に引退した10000形HiSEの一部は長野電鉄に譲渡された。4両編成に短縮し、展望車両の一部を車いす対応スペースに改造して走らせている。7000形について小田急電鉄は「保存については検討中、他社への譲渡の予定は今のところない」という。多くの人々に親しまれた7000形の「余生」が気になる。

特急「はこね」の終着駅・箱根湯本と7000形

写真=杉山秀樹/文藝春秋