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郵便局と一体化、道の駅を併設、オフィスにも…変わり始めた「無人駅」

 むろん、鉄道会社も無人駅増加などによるサービスや安全性の低下は極力防ぎたいと考えているし、これまでも無人になった駅舎の有効活用も行われている。

 たとえば、JR内房線の江見駅は1970年代から無人駅だったが、2020年に郵便局と一体化した新駅舎を建築。通常の駅と比べれば制限はあるものの、きっぷの販売や列車案内などの業務も郵便局に委託している。

 また、駅舎そのものを地元自治体などに譲渡し、地域活性化のために活用している例も多い。公民館や図書館などが入居したり、道の駅を併設したりというのもそのひとつだ。カフェなどが入居することで観光スポット化した駅もある。たとえばJR大村線千綿駅は、ホームのすぐ目の前に大村湾が広がる絶景の駅で、古い木造駅舎はカフェとして活用。休日を中心に多くの観光客を集めている。

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JR大村線千綿駅 ©鼠入昌史
無人駅を「オフィス」として活用するJR西日本岡山支社 ©鼠入昌史

 また、JR西日本岡山支社では、少し変わった方法で無人駅の駅舎を活用している。2020年5月から無人駅を活用してオフィス業務を行っているのだ。当初はコロナ禍での分散勤務が目的だったが、自宅に近い無人駅で仕事ができることなどが理由で業務の効率化も進み、職員からの評判も上々。現場経験のある鉄道職員なので列車案内や急病人対応などをすることもあるという。

 これには無人化直後で駅舎内にデスクや電話・ネット回線の設備などが残っている必要があり、どの駅でもできるわけではない。ただ、無人駅を活用しつつサービス・安全性の維持にも貢献できる取り組みとして注目できるだろう。

 いずれにしても、今後は駅の無人化や窓口の廃止が都市部の駅で拡大していくことは間違いない。利用者の減少に加え、少子化による人材難も相まって、鉄道を取り巻く環境の厳しさはローカル線だけでなく都市部にも及んでいる。鉄道路線や駅などの施設をどのように活かしていくのか。それは、都市部を含めてすべての利用者が向き合わざるを得ないテーマなのである。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。