そろそろ本当の流行語を考えてみよう、が今回のテーマです。
先日、10代向け雑誌に流行語について書きました。この時期になると発表される「ユーキャン新語・流行語大賞」。年間大賞はヤクルト村上宗隆選手の活躍を表現した「村神様」でしたが、これって本当に10代の皆さんのあいだで流行っていましたか? と尋ねてみたかったのだ。
そのうえで「流行語大賞」について、
《「今年はこんな言葉が流行ったよね」という、おじさんによるおじさんのための確認作業だと思えばいいと考えています。そのあと「そんなの流行ってねーよ」とSNSからツッコミが発生するまでが流行語大賞なのです。今年からはこの流れを楽しんでください。》
と提案しました。
「流行語大賞」に関しては文筆家の能町みね子さんが以前から言及している。ノミネート語を選出する人を擬人化するという発想で、たとえば「野球が大好きなおじさん」と考察している。実際に今年は30語中に6語もの野球関連の言葉が入っていた。「令和の怪物」とか「きつねダンス」とか。いま初めて「令和の怪物」を目にした方もいるかもしれないがあなたの責任ではありません。かつては「神ってる」とか「トリプルスリー」を年間大賞に選んで世の中を困惑させた実績もあるからだ。
世の中とのギャップが生まれるわけ
なぜこんなに世の中とのギャップがあるのか。私には思い当たるフシがある。スポーツ新聞では「村神様」とか「神ってる」は間違いなく流行していたのだ。スポーツ新聞とおじさんは相性がいい。流行語大賞を選ぶ人は野球が好きでスポーツ新聞を読み、それが一般的だと思っているのかもしれない。しかしプロ野球もスポーツ新聞も「嗜好品」となった今、世の中との温度差が生まれるだけなのだ。
たとえばロッテの佐々木朗希投手を評した「令和の怪物」のノミネートが発表されたとき、日刊スポーツは「ニッカンは3年前から使ってた!!」と嬉々として報告していた(11月5日)。その興奮の度合いがなんとも世の中とのギャップを象徴していた。私は子どもの頃からスポーツ新聞が大好きだったので年齢が追いついた嬉しさがあるのですが、この温度差を見るとちょっと切ない。