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吉田の迷いを消したボラス氏の殺し文句
スコット・ボラス氏は9月に吉田の代理人になったばかりだったという。
「以前の代理人は水面下の調査でメジャー球団から好感触をつかめていなかった。そのため吉田はポスティングの利用を躊躇していた。そこでボラス氏は『自分なら日本人最高契約を結んでみせる』と豪語し、自分と代理人契約を結ぶようエサをぶら下げた。この強気のスタンスに、吉田は代理人に依頼することを決めたようだ」(同前)
カネ余り、新労使協定にインフレも追い風
ボラス氏は、奇しくも同じレッドソックスへ、松坂大輔投手がポスティング移籍した2006年オフにも6年総額5200万ドル(当時約60億円)の契約をまとめている。
数々の大物選手の契約を手がけ、時には交渉を決裂させるなど金銭面に妥協しない手法は「吸血鬼」の異名を取る。
「ボラスが代理人になってからは、吉田のメジャー移籍はとんとん拍子に進んでいった。あとは(12月15日の)期限を前に、どのタイミングでポスティングを申請するかというだけだった。交渉では、とにかく総額で日本人最高となるように腐心したようだ」(同前)
今季のMLBは収益がコロナ禍前の過去最高を更新し、各球団に「カネ余り」の現状があった。さらに今季開幕前にぜいたく税の上限を引き上げた新労使協定が妥結し、球団は安心して巨額契約を結べるようになった。そして米国内の記録的なインフレと、吉田の契約も高騰する条件は整っていた。
ボラス氏は、固執していた鈴木を超える日本人野手最高の契約を、有言実行で勝ち取った。
「日本人野手が獲得したことのない契約をしたことは大きな名誉」と誇る同氏の言葉を米メディアは報じた。