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《千葉真一さん一周忌》「寂しさもあると同時に“ようやく兄貴から解放される”とほっとした…」木こりになった実弟(73)が抱え続けたスターへの複雑な感情と「ジージの森」に託した思い

前田満穂さんインタビュー#2

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 千葉県袖ケ浦市にあるテーマパーク「東京ドイツ村」。その一角に「ジージの森」というアトラクションエリアがある。ツリーハウスやブランコなどのアスレチック、池でのザリガニ釣り、焚火が楽しめる。そんな遊び心あふれる場所を作ったのは、前田満穂さん、73歳。2021年8月に新型コロナウイルスによる肺炎で死去した俳優の千葉真一さんの実弟であり、自身も千葉治郎、矢吹二朗の名で1970年代に俳優として活躍している。だが、82年に芸能界を引退すると、人知れず地元・君津に帰り田舎暮らしを始めた。

 千葉さんの死去から約1年。『仮面ライダー』や『ロボット刑事』といった人気ドラマに出演した元人気俳優が、スターとなった兄へ抱く複雑な心境と、地元で木こりとなった理由を語った。(全2回の2回目/#1を読む)

前田満穂さん 撮影/平松市聖 ©文藝春秋

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新宿生まれ新宿育ちの妻は田舎暮らしに反対

――芸能界を引退した後、お母さまの介護をきっかけに、地元である千葉県君津市に移られたとのことですが、何歳くらいの時だったのでしょう。

前田 40歳の頃でした。父が亡くなって、80歳を過ぎた田舎の母を一人にさせられないと考えて地元に戻ることにしたんです。子供を田舎で育てたいというのもあったんですけどね。

――前田さんは1974年、25歳の時に一般女性とご結婚されています。地元へ戻ることに奥様は反対されなかったのですか?

前田 されましたよ(笑)。うちのかみさんは新宿生まれ新宿育ち。田舎暮らしは嫌だと言っていましたが、長い時間をかけて説得しました。こちらに来て最初の2カ月は「夜になると暗い」と泣いていましたが、段々慣れてきてね。今となっては「もう東京は人が住むとこじゃないわ」なんて言って、すっかり田舎の婆さんになりましたよ(笑)。

前田さん 撮影/平松市聖 ©文藝春秋

大工をめざしていたら、木こりをやってる方に出会って…

――俳優を辞めてからは、アパレル会社などを経営されていたんですよね。お仕事はどうされたんですか?

前田 移住して最初の1年くらいは君津から東京に通っていたのですが、段々とくたびれてきちゃったんです。東京の仕事を辞めてこちらで暮らしていこうと思った時、「そうだ、大工をやろう」と。

前田さん 撮影/平松市聖 ©文藝春秋

――何かきっかけがあったのですか?

前田 元々何かを作るのが好きだったのかもしれません。東京に住んでいた頃、家にデッキをつけたくて、自分で材木を買ってきて作ってみたんです。そうしたら、意外とうまくできてしまって、面白さに目覚めました。こちらに移住した時、実家の敷地内に家を新築したのですが、建っていく様子を見るのが楽しくてね。棟梁に、「大工になりたいんだけど」と言って働く場所を紹介してもらいました。「その年齢で?」と思われたかもしれませんね(笑)。自分でも教会を建設するボランティアに参加したりして、家の構造を学ぶうち、今度は木こりをやっている方に出会った。

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